大磐石だいばんじゃく)” の例文
そろりそろりと臑皿すねざらの下へ手をあてごうて動かして見ようとすると、大磐石だいばんじゃくの如く落着いた脚は非常の苦痛を感ぜねばならぬ。
九月十四日の朝 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
先に来ている二人をめぐって、大磐石だいばんじゃくのうえに車座となり、なおそこらの岩へ思い思いに腰をかけた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こうやってこの席に坐っちまえば大磐石だいばんじゃくだ、そんなこけ脅しには驚かねえ、なあ双公、もしおいらが縛り首になるとしたら、おめえも同じ繩にかかってくれらあなあ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その声は私の頭の上から大磐石だいばんじゃくのようにしかかって来た。しかも今までのタヨリない、淋しい態度とは打って変って、父親の言葉かと思われるほどの威厳と慈悲とが、その底にこもっていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの人は、もう大磐石だいばんじゃくで、何が来たってびくともしませんものね。
そのあいだ彼は、虫の這う様に遅々として下って来る天井を支えながら、徐々に腰をかがめ、次には坐り、次にはうずくまり、遂に横臥おうがして、目を圧する大磐石だいばんじゃくに、とじこめられ、骨をしめぎにかけられるまで
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その裏門を半町ほど行くと、大洋の浪岩を噛む、岩石峨々ががたる海岸であり、海岸から見下ろした足もとには、小さな入江が出来ていた。入江の上に突き出しているのが、象ヶ鼻という大磐石だいばんじゃくであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下萌したもえ大磐石だいばんじゃくをもたげたる
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
足あり、大磐石だいばんじゃくの如し。わずかに指頭を以てこの脚頭に触るれば天地震動、草木号叫、女媧氏じょかしいまだこの足を断じ去つて、五色の石を作らず。(九月十四日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ひきつづいて味方の高翔こうしょう魏延ぎえんなどが、列柳城れつりゅうじょう付近からこの街亭のうしろへも後詰して、陰に陽に、ここを援け、魏軍を牽制けんせいしつつあると聞えたので、彼はなお大磐石だいばんじゃくをすえているここちをもって
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)