大姐御おおあねご)” の例文
「やられたね。恐れ入った。いつまでも、以前のお袖さんと思っていたら、いつかおめえも大姐御おおあねごだ。——いや女の度胸にはかなわねえよ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英人カスリーン・ロングは大したことはないが、仏人マルグリット・ロンは、フランスのピアノ音楽界の女大御所で、大姐御おおあねご的存在になっている。
それのみではない。ゆすりかたりとあらゆる悪事を重ねて、かれら仲間においても、なんと申すか、ま、大姐御おおあねごである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
正面切ったのは、色の白い、ちょっとぼうぼう眉のお公卿くげさんと見えるような大姐御おおあねご、どてらを引っかけて、立膝で、手札と場札とを見比べている。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼女はただに女房たちの間の大姐御おおあねごであるのみならず、斉信のごとき公卿くげたちに対してもはるかに上手うわてである。あたかも男と女が所を異にしているようにさえも見える。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
いまや名実ともにこの一座の大姐御おおあねご
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
(聞きしにまさる大姐御おおあねごだわ)
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
私は十二支組の大姐御おおあねごでお前は一番の新米の亥太郎じゃないか、馬鹿も休み休み言わないと承知しないよッ
浅草あさくさ駒形こまがた兄哥あにい、つづみの与吉とともに、彼の仲間の大姐御おおあねご、尺取り横町の櫛巻くしまきふじの意気な住居に、こけ猿、くだらないがらくたのように、ごろんところがっているんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
王子のお滝という、名題の女巾着切きんちゃくきり、二十四五の豊満な肉体と、爛熟らんじゅくし切った媚態びたいとで、重なる悪事をカムフラージュして行く、その道では知らぬ者のない大姐御おおあねごです。
おやッ! と胆を消しながらもそこは櫛まきの大姐御おおあねご、にっと闇黒に歯を見せてすばやく左右の屋根を仰ぐと、どっこい! 人狩りの網に洩れ目はなく、御用の二字を筆太に読ませた提灯ちょうちん
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
イギリスの女流では大姐御おおあねご(甚だ失礼な言葉だが)格であるらしい。ピアノは非常に老巧な人で、エリー・ナイ三重奏団を組織してピアノ・トリオをポリドールに入れている。
バトリはフランス楽壇の大姐御おおあねごで、その腕は歌にも社交にも、政治家にも有名である。
左孝は振り上げて大見得を切った扇で、自分のひたいをピシャリと叩きました。このとき大姐御おおあねごのお勢が、片手にひしと伴三郎の袖を掴みながら、大急ぎで眼隠しの手拭をかなぐり捨てたのです。