大兵たいひょう)” の例文
田川博士のそばにいて何か話をしていた一人の大兵たいひょうな船員がいたが、葉子の当惑しきった様子を見ると、いきなり大股おおまたに近づいて来て
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
どちらも大森署の巡査であるが、一人は猪村いむらといって丸々したイガ栗頭。大兵たいひょう肥満の鬚男ひげおとこで、制服が張千切はちきれそうに見える故参こさん格である。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その障子の一枚を踏み破って、のめるように縁の廊下に転び出た大兵たいひょうの士——月輪剣門にその人ありと知られたいぬい万兵衛だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
額が禿げあがった、この大兵たいひょうな老人は、まばらにはなったが丈夫そうな歯をき出して、元気よく宮内を待遇した。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
その大兵たいひょう露助ろすけは、小さい日本兵の尖った喧嘩腰けんかごしの命令に、唯々諾々いいだくだくと、むしろニコニコしながら、背後から追いたてられて、便所などに、悠々ゆうゆうと大股にったりしていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
すると、禅房の木戸をあけ、庭石に木履ぼくりの音を高くさせて入ってきた大兵たいひょうの僧がある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大阪出の女形にて、大兵たいひょうながら女房役者として用いらる。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かた手に抜刀をさげたまま——そして、草に仰臥したなり、その大兵たいひょうのからだは長々と伸びきって、すぐ眠りにはいったかのよう……丸太のごとくうごかない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)