夏至げし)” の例文
これは彼方あちらへ行ってから、銘々判読するとして、ここで申上げて置き度いのは、その中に『夏至げしの日の正午しょううまこく
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
同じ場所へ射す時は、夏至げし冬至とうじの外は、一年に二度しかない。太陽が赤道へ近づくとき、赤道を離れる時、その往復に一度ずつ。ね、分り切ったことだ
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
伽藍がらんを見物に行く。案内のじいさんを三リラで雇ったが、早口のドイツ語はよく聞き取れなかった。夏至げしの日に天井の穴から日が差し込むという事だけはよくわかった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
春と冬は水かず、椿の花の燃ゆるにもべにを解くばかりのしずくもなし。ただ夏至げしのはじめの第一じつ、村の人の寝心にも、疑いなく、時刻もたがえず、さらさらと白銀しろがねの糸をならして湧く。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一番日の永い頂上は申すまでもなく夏至げしでありますが、前申した秋の日の釣瓶つるべ落しというようにそのにわかに日の短くなった心持が冬の頂上よりもかえって秋において強いように
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
日の最長きは夏至げし前後なり、しかれども俳句にては日永を春とす。夜の最長きは冬至前後なり、しかれども俳句にては長夜ちょうやを秋とす。これは理屈よりでずして感情にもとづきたるの致す所なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
戦争の直前ハイデルベルヒに行ったら、あの美しい城内の広場でシェイクスピアの『夏至げしの宵祭の夢』を野外劇として演じ、特にイギリス・アメリカの訪問者を歓迎するというびらを撒いていた。
パリの地下牢 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
聖約翰祭せいヨハネさい夏至げしの頃森陰もりかげおとなひよりも
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
夏至げし今日と思ひつゝ書を閉ぢにけり
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)