墨梅ぼくばい)” の例文
京都の相国寺に維明ゐめいといふ僧がゐて、墨梅ぼくばいを画くことを善くした。名は周圭しうけいあざなは羽山と云つたのは此人である。茶山と波響とは始て維明が庵室に於て相見た。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
墨梅ぼくばい、八景の間、雉子きじの間、唐子からこの間など、もう画工は不眠で描いているし、ちりも嫌う漆師は、朱欄や黒壁を塗りながら、わき目をふらず、職域に没頭している。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欄間らんま壁障へきしょうはすべて総漆そううるし、襖には、狩野永徳かのうえいとくそのほか当代の巨匠きょしょうふでをそろえての間、芙蓉ふようの間、墨梅ぼくばいの間、遠寺晩鐘の間などと呼ぶにふさわしい彩管さいかんふるっている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)