塵芥箱ごみばこ)” の例文
Sビルディングを中心にして半径一町くらいの円の中の溝渠どぶとか塵芥箱ごみばことか、そのほかちょっと人目につかんようなところは残らず捜してくれたまえ。
五階の窓:02 合作の二 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
その上から松の枝も見える。石灰いしばいの散った便所の掃除口も見える。塵芥箱ごみばこの並んだ処もある。そのへんに猫がうろうろしている。人通りは案外にはげしい。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
縱令よし、都大路の塵芥箱ごみばこの蓋を一つ/\開けて一粒の飯を拾ひ歩くやうな、うらぶれ果てた生活に面しようと、それは若い間の少時しばらくのことで、結局は故郷があり
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
悲しいかな、俗衆の口は塵芥箱ごみばこの如く、心力の咀嚼を要せざるもののみを受入れんとする。その結果として平凡陳腐なる作物のみが代表的作品として歓迎せられるのである。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
ところでぼくの教室の塵芥箱ごみばこをみたら、ここは大学の医学部ではなくて料理学校に来たのではないかと錯覚する人もあろう。それほどぼくの教室では大量の卵が消費されるのだ。
灰汁あくやうのものを鍋の表面に浮かべてゐたし、また、すし屋の塵芥箱ごみばこから、集めて来たらしい、赤い生薑しやうがの色がどぎつく染まつた種々雑多の形のくづれたすしやら——すべて、異臭を放ち
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
極めて貴族的な純白のコリーが、独特にすらりと長い顔、その胴つき、しなやかな前脚の線をいっぱいにふみかけ、大きい塵芥箱ごみばこのふたをひっくりかえして、その中を漁っているのであった。
犬三態 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ある料理店の勝手口に、黒く塗った大型の塵芥箱ごみばこが据えてある。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
の上からまつの枝も見える。石灰いしばひの散つた便所の掃除口さうぢぐちも見える。塵芥箱ごみばこならんだところもある。へんに猫がうろ/\してる。人通ひとゞほりは案外にはげしい。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)