塵寰じんかん)” の例文
もしそれ真に学に志さんとするものはもとより遠く塵寰じんかんを脱して世潮の浮沈を度外に置くを要するや言をたざるなり。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
塵寰じんかんを離れた山中湖の附近、神のように清い二人の乙女、女ばかりの水入らずの生活、美しい自然清潔な空気、なんと館の生活とはおびただしい相違のあることよ!
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
半滴はんてきのひろがりに、一瞬の短かきをぬすんで、疾風のすは、春にいて春を制する深きまなこである。このひとみさかのぼって、魔力のきょうきわむるとき、桃源とうげんに骨を白うして、再び塵寰じんかんに帰るを得ず。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その頃彼らは八ヶ嶽を出て、下界の塵寰じんかんへ下りて来た。それは盗まれた彼らの宝——宗介天狗のご神体に着せた、黄金細工の甲冑かっちゅうを、奪い返そうためであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)