塗膳ぬりぜん)” の例文
鶏が銀に輝やいて、日の出のくれないみなぎるような、夜の雪の大広間、蒔絵まきえの車がひとりでに廻るように、塗膳ぬりぜんがずらりと並んで、細工場でも、運八美術閣だから立派なのよ。
それは皿や小鉢には当らず、塗膳ぬりぜんのふちに当って飛び、敷畳の上へ転げた。
白いものの山型に盛られているつぼと、茶色の塊が入っている鉢と白いものの横っている皿と香のものと配置よろしき塗膳ぬりぜんを持出した。醤油注しょうゆつぎ、手塩皿、ちりれんげ、なぞの載っている盆を持出した。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
餌食がその柔かな白々とした手足を解いて、木の根の塗膳ぬりぜん錦手にしきでの葉の小皿盛となるまでは、精々、咲いた花の首尾を守護して、夢中に躍跳ねるまで、たのしませておかねばならん。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
餌食が其の柔かな白々しろじろとした手足をいて、木の根の塗膳ぬりぜん錦手にしきで小皿盛こざらもりと成るまでは、精々せいぜい、咲いた花の首尾を守護して、夢中に躍跳おどりはねるまで、たのしませて置かねば成らん。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)