土用波どようなみ)” の例文
土用波どようなみという高い波が風もないのに海岸に打寄うちよせるころになると、海水浴にているみやこの人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「あの先生せんせいがついていらっしゃいますから、だいじょうぶですし、まだ、土用波どようなみ時節じせつでもありませんから。」と、宿やどひとは、いいました。
海と少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
耳をろうせんばかりのどよめきが、土用波どようなみのように見物人けんぶつにんをもみあげた。なにかののしるような声、嘲笑ちょうしょうするようなわめき、それらがあらしのごとく、かれをとりまいた心地ここちがした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私たち三人は土用波どようなみがあぶないということも何も忘れてしまって波越なみこしの遊びを続けさまにやっていました。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
少年しょうねんは、いまにもおそろしい土用波どようなみが、やってくるということをらなかったのです。
海と少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、そのあとから、黙然もくねんと追従してゆく紋太夫のすがたには、いかに冷静を誇示して見せても、おおい得ないものがあった。かれのおもてと胸のうちとは、ちょうど土用波どようなみのようなものだった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)