囹圄ひとや)” の例文
いつものようにそばに葉子のいないのを物足りなく感じながらも、憂鬱ゆううつ囹圄ひとやから遠のいて来た心安さもあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
吾身わがみならぬ者は、如何いかなる人もみな可羨うらやましく、朝夕の雀鴉すずめからす、庭の木草に至るまで、それぞれにさいはひならぬは無御座ござなく、世の光に遠き囹圄ひとやつなが候悪人さふらふあくにんにても、罪ゆり候日さふらふひたのしみ有之候これありさふらふものを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
囹圄ひとやのタツソオが身をそこなひしは、獨り戀路の關を据ゑられしが爲めのみにあらず。その詩の爲めに知音ちいんを得ざるを恨みしが爲めなり。夫人。われは今おん身が上を語れり。タツソオが事を言はず。
或人は嬉笑あざけりをうけ、鞭打れ、縲絏なわめ囹圄ひとやの苦を受け
囹圄ひとやめぐりなる樹樹きぎの枝はりとられ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)