困却こんきゃく)” の例文
「毎日シケが続きまして、お魚がとれませんでした。宿屋では困却こんきゃくのあまり、いわしのめざしを大殿様のご食膳にのぼせました」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なんと各々方おのおのがた、この敵の仕打ちはまことに卑怯には相違ないが、この際平馬どのにもしものことがあっては、われわれ一同はまことに困却こんきゃくつかまつる。
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
無論うそく気は始めからないのだが、こう拝むようにされて書いてやるほどの名筆でもあるまいと思うと、困却こんきゃく慚愧ざんきでほとほと持て余してしまう。時に橋本が例のごとく口をいてくれた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東海さんの困却こんきゃくをまのあたりみせられ、いささ後悔こうかいの念にられ、良心の苛責かしゃくもひどかったときなので、ともすれば見失いそうな自分の姿をつかまえるため、すっかり茫然ぼうぜんとしていて、近くにあった
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
兄も、ここちょっと手もとがたらなくて、いささか困却こんきゃくしておるのだが、三期の玉落ちで、元利がんり引き去って苦しくないから、どうだろう、五十両ばかり用だってもらえまいか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
よいではないか。他人まかせの養子というやつには、末へいって困却こんきゃくする例がままある。当人同士が好きなら、それが何よりだ。お前もせいぜい焚きつけて後日左団扇うちわになおる工面を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)