四面楚歌しめんそか)” の例文
師直、師泰にたいする反感が、顕氏までを敵側に走らせたものであると分っていたが、それにせよ今はどこも四面楚歌しめんそかである。腹をすえる時だと思った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸に部内の人は私を知っており、物の道理どうりをわきまえ、私を支持してくれたが、門を出ずれば四面楚歌しめんそかの声だ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
さりとて今さら中止するわけにも行かないので、四面楚歌しめんそかのうちに一週間ほども興行をつづけていると、警視庁でも輿論よろんの沸騰にかんがみて、さらに劇場に対して上演中止を命令した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三成は四面楚歌しめんそかであるとはいえその背後には豊臣家があり、家康の党類は多いと云っても、その中のある者は反三成のゆえに家康に結ぶだけで、豊臣徳川となればハッキリ豊臣につく連中だった。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ともしびくろうしては、数行すうこう虞氏ぐしが涙、夜深うしては、四面楚歌しめんそかの声
孤立無援、四面楚歌しめんそかというところか。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四面楚歌しめんそかか」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかしその執権御所も、新田勢が三方面から府内へ火をかけ出してからは、まもなく、四面楚歌しめんそかの潮の中だった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よくもいった、四面楚歌しめんそかの中とは。——信長がこの居城、見まわせば、八方敵ならぬ境はない」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五郎次はブルッと身ぶるいしたが、すでに空井戸からいどの逃げみちはたれ、四面楚歌しめんそかにかこまれてしまった上は、とうてい助かるすべはないとかんねんして、やにわに陣刀をギラリと抜き
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その武田家と、京都の将軍のあいだに、近ごろ繁く、密使の交わされていること、双方のはらの中など、思いめぐらせば、御当家は今やまったく、四面楚歌しめんそかの中にあるかと考えられます。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博多の地に過去十年余の業績と人柄をたたえられていた九州探題の北条英時ひでときも、たちまち、四面楚歌しめんそかの包囲中におかれ、鎌倉滅亡の日からいくばくもない、当年の五月二十五日、たちに火をかけ
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉水は今や、文字どおりな四面楚歌しめんそかだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四面楚歌しめんそか
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)