しやが)” の例文
「その譯はね、若しあなたが嫌だと云つたら、私はどんな恐ろしいことをやり出すか分らないからなんです。」彼の聲はしやがれてゐた。
「へへへ……面白いですな、あれだから健康たつしやになりまさ。」と親達が感心して見惚みとれてゐると、高木氏はづかづかとやつて来た。そしてしやがれた声で
路傍みちばたの夏草の中に、汚い服裝なりをした一人の女乞食が俯臥うつぶせに寢てゐて、傍には、生れて滿一年とたぬ赤兒が、しやがれた聲を絞つて泣きながら、草の中を這𢌞はひまはつてゐた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
千登世は冷靜を保つて、「さう、さうでしたの」としやがれた聲で言つた。圭一郎を信じようとする彼女の焦躁があり/\と面に溢れたが、しかし彼女は到底我慢がしきれなかつた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
喧嘩けんくわでもしたのですかい、声がひどくしやがれてゐるやうぢやが。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
かれしやがれたこゑしぼつて、投掛なげかけ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私は、小時計が銀の鐘聲を、柱時計がしやがれた顫へる打音を終る迄待つて、さて話を進めた——