喧擾けんじょう)” の例文
しかれどもこれらの事件は他の事件と聯絡して一時歌界の問題となり、甲論乙駁こうろんおつばく喧擾けんじょうを極めたるは世人をしてやや歌界に注目せしめたる者あり。新年以後病苦益〻加はり殊に筆を取るに悩む。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それがため、かれは例の忌わしい広告画を押入れにしまって、宿を出ると、いつも騒騒しい楽隊や喧擾けんじょうや食物や淫逸いんいつちまたの裏から裏を這いありく犬のように身すぼらしくぶらつくのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
成善が従学してからは、成斎は始終正教に侍していたのである。後に至って成善は朝の課業の喧擾けんじょうを避け、午後にうて単独におしえを受けた。そこで成斎の観劇談を聴くことしばしばであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
甲板デッキの上は一時すこぶ喧擾けんじょうきわめたりき。乗客は各々おのおの生命を気遣きづかいしなり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)