うそ)” の例文
何か世間にない書物の名をこしらえてうそでも書いてやろうかと思うたが、いずれ先方も十分支度して掛かったはずと惟えばそうもならず。
此様こんな事ならまだ幾らでも列べられるだろうが、列べたって詰らない。皆うそだ。うそでない事を一つ書いて置こう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
魚屋大声を揚げてうそつきの牝犬め、わが夫は十年来離さず犬の皮のパッチを穿いているが、彼処あそこ肉荳蔲にくずくのように茶色だとののしったそうだ。
うそだい! 殺されるもんか! 札が附いてるもの……」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どうもうそらしいから自分ためして実否を験せんと毎度望むが、虎皮が手もとにないから事遂げぬ。読者中誰か貸してくれぬかしら。
ついに真ならぬようの事となって今はまっかなうそという、これは疑いもなく明白なるをまっかというなれど、実は移りて意の表裏したるなるべしと見ゆ。
うそと思い気に掛くる人なかりしに、七十二年前、果たしてそこよりアルフレッド大王時代およびその少しのちの古銀貨計七千枚、外に宝物無数掘り出せり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
酒を忘れたものか書いていない。ちょっとうそのような話だが、ロメーンズの『動物の智慧アニマルインテリジェンス』に米国のクレイポール教授が『ネーチュール』雑誌へ通信した話を出す。
妾実は家も骨内みうちもない孤児だが、ふと君を一日まいらせてより去りがたく覚えた熱情の極、最前のようなうそいたも、お前と夫婦に成田山なりたさん早く新勝寺しんしょうじを持って見たいと聞いて
口に尾をふくみて、たがなりになり、いなずまほど迅く追い走ると言ったが、全くうそで少しも毒なし、しかし今も黒人など、この蛇時に数百万広野に群がり、眼から火花を散らして躍り舞う
ちょっとうそのようだがウィルキンソンほどの大権威家がよい加減な言を吐く気遣いなし。
すべて人間は全くのうそはなく、インドのモンネース獣は帽蛇コブラと闘うに、ある草を以てその毒を制し、これを殺すという。それから鼬が芸香るうだを以てバシリスクを平らげるといい出したのだ。
建久四癸丑みずのとうし年に十九なら安元元乙未きのとひつじ年すなわち未歳生まれで寅歳でない、『東鑑』は偽りなしだから『異本曾我物語』はうそで寅歳生まれで虎と名づけたでなく寅時にでも生まれたのだろ。
それから推すと神馬草の伝説もうそでなかろう。