和藤内わとうない)” の例文
小屋のなかでは鉦や太鼓をさわがしく叩き立てていた。和藤内わとうないの虎狩が今や始まっているのである。看板にも国姓爺こくせんや合戦と筆太ふでぶとにしるしてあった。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから力持、相撲のように太った女、諸肌脱もろはだぬぎで和藤内わとうないのような風をしているその女の腹の上へうすを載せて、その上で餅をいたり、その臼をまた手玉に取ったりする。
広目こうもく二天が悪鬼毒竜をふみ、小栗おぐり判官はんがん和藤内わとうない悍馬かんば猛虎にまたがるごとく、ガネサに模し作られた大黒天は初め鼠を踏み、次に乗る所を像に作られたが、厨神として台所荒しの鼠を制伏するの義は
牡丹に唐獅子竹にとらとら追ふてしるは和藤内わとうない
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
敷皮しきがわ曾我そが」の重忠しげただ、「国姓爺合戦こくせんやかっせん」の和藤内わとうない、「二人袴ににんばかま」の高砂尉兵衛などを勤めたのであるが、その時代としては何分にも交通不便利の場所にあるので
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一時はどうあしらっていいかに迷いましたけれども、虎はおろか、象でも鬼でも一ひしぎと、和藤内わとうないの勇気を取戻し、身構えをして見ると、それはやっぱり犬の一種だということがわかりました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
菊五郎もその年の歌舞伎座十一月興行に「忠臣蔵」の勘平かんぺいと本蔵と赤垣源蔵と、「国姓爺合戦こくせんやかっせん」の和藤内わとうないとを勤めているあいだに発病して、半途から欠勤するのやむなきに至った。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうも困ったものだ、和藤内わとうないではないが、行けども行けども藪の中。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)