合印あいじるし)” の例文
これは東京随一の不良少女享楽団が全部揃いで持っているもので、どこかに合印あいじるしか何かあるらしいがハッキリとわからない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
人馬の公用を保証するために、京都の大舎人寮おおとねりりょう、江戸の道中奉行所をはじめ、その他全国諸藩から送ってよこしてある大小種々の印鑑がその中から出て来た。宿駅の合印あいじるしだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あすは討入りという四月二十日の夜、数馬は行水を使って、月題さかやきって、髪には忠利に拝領した名香初音はつねき込めた。白無垢しろむく白襷しろだすき白鉢巻しろはちまきをして、肩に合印あいじるし角取紙すみとりがみをつけた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「よし。ではめいめい、合印あいじるしとして、これをかぶとの真向へ挿してゆけ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先ず福昌号の表口へ行って、その店の商品の合印あいじるしが○に福の字である事を、その肉の太さから文字の恰好まで間違いないように懐紙に写し取った。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それらは最近の府藩県の動きを知るに足るもので、伝馬所に必要な宿駅の合印あいじるしである。尾州藩関係の書類、木曾下四宿に連帯責任のある書付なぞになると、この仕分けがまた容易でなかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)