叛骨はんこつ)” の例文
「かかる愚痴は狂人の言と見ておかねばなりません。叛骨はんこつある者は、一時恩を感じても、後またかならず叛骨をあらわしますから」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや全く困難らしい。叛骨はんこつを帯びた連中が随分諸方面にいるようでござる。南海の龍、紀州大納言、このお方などは随一人だ」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「成程よくは判らないが、矢張やつぱり将門のこつらしいな。こゝに叛骨はんこつが出てる工合から見ると……」
性来の叛骨はんこつが、彼の心を駆りたてたのは、このときであろう。
徳川に叛骨はんこつを示してみるようなやからがいた時代は、世の中が、何かを求めて、人間の自堕落を、ゆるさぬとしていたのじゃよ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「予は、仏説や君子の説には、無条件で服することができん。性来の叛骨はんこつとみえる。しかし、大丈夫のゆく道は、おのずから大丈夫でなくては解し難い」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あのお方の相貌そうぼうには、主君をも冒しかねない叛骨はんこつうかがわれると……非常な凶相きょうそうだと申しおりましたそうです」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのたくましい叛骨はんこつを、坊主あたまと、法衣につつんで、彼は、が悪そうに、信雄について、秀吉の前へ出た。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丞相遠く出られる日より、ひそかに魏延ぎえん叛骨はんこつは憂いのたねとしておられました。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、おれには元々、そういう叛骨はんこつがあったのだと思う。それがおれを、こうさせている。——叛骨は、叛骨も無さそうな人間のうちに、かえって図太くひそんでいるものらしい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくし程、世の中にあてはまにくい人間はないらしい。皆さんとは仲よく交際つきあえもし、温厚であるなどといわれているが、どうして、対世の中となると、わたくしの叛骨はんこつはどうにもなりません。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「若いうちは、えて、そういう叛骨はんこつを誇りたがるものだ。そして」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「むかし先帝も仰せられたことがある。魏延は勇猛ではあるが、叛骨はんこつの士であると。予もそれを知らないではないが、つい彼の勇を惜しんで今日に至った。……いまはこれを除かねばならないだろう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)