参上あが)” の例文
旧字:參上
向うももう参上あがりませんといい放った最後の言葉に対して、彼の前へ出て来る気のない事は知れていた。どうしても中へ入って取り次ぐ人の必要があった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明日の朝参上あがらうとおもふて居りました、といへばぢろりと其顔下眼に睨み、態と泰然おちつきたる源太、応、左様いふ其方の心算つもりであつたか、此方は例の気短故今しがたまで待つて居たが
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
此の廿五日にも参上あがつたのですよ、御近所の貧乏人の子女こども御招およびなすつて、クリスマスの御祝をなさいましてネ、——其れに余りお広くもない御家おうちに築地の女殺で八釜やかましかつた男のおやだの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「いえ、是非貴方に御願ひして来て呉れろツて、病人も頼むんです。それでわざ/\参上あがつたんです。私が貴方をよく知つてることを病人に話したもんですから……私は柿田さんが大好きツて……。」
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
十兵衛は不束ふつつかに一礼して重げに口を開き、明日の朝参上あがろうとおもうておりました、といえばじろりとその顔下眼ににらみ、わざと泰然おちつきたる源太、おお、そういう其方そちのつもりであったか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「もう参上あがりませんから」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)