厨人ちゅうじん)” の例文
しかれども小説中に料理法を点綴てんていするはその一致せざること懐石料理に牛豚の肉を盛るごとし。厨人ちゅうじんの労苦尋常にえて口にするもの味を感ぜざるべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
仏と問答してたちまち悟り、病死して無熱天に生まれた。仏いわく、過去に一城の王好んで肉を食らう。時に王に求むる所ある者、鶏を献じ、王これを厨人ちゅうじんに渡し汁にかしめた。
有名なる夜会の事とて一千有余名の来賓につるその献立の如何いか按配あんばいされ、厨人ちゅうじんの如何に苦心せしやは料理法に重きを置かるる者の等しく知らんと欲するところならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
釜の此方こなた厨人ちゅうじん土間に立ちてつぼを棚にせ、厨人の前方板にてかこいたる中に瓦斯竈がすかまど三基を置く。中央の置棚おきだなに野菜類のうずたかかごに盛られたるは同邸の一名物と称せらるる温室仕立の野菜なり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)