厄日やくび)” の例文
つづいて二百二十日の厄日やくびもまたそれとはほとんど気もつかぬばかり、いつに変らぬ残暑の西日にひぐらしの声のみあわただしく夜になった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「へえエ、昨夜は玉井家の厄日やくびたい。勝則君も、ごりょんも、けたといいよった。親子三人揃うてこけるちゅうのは珍しか」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
片瀬へ着いたのは大嵐の眞つ最中、忘れもしない二百十日の厄日やくびの翌る日、陸から見ると江の島が泡の中へ湧き上がるやうな恐ろしい景色でした。
また、民間にて厄年やくどし厄日やくびというものがある。通例、男子は二十五歳、四十二歳、六十一歳を厄年とし、女子は十九歳、三十三歳、三十七歳を厄年とす。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「さあ、行きましょう、山王様へおまいりをして、さっぱりと清めていただきましょう、今日は厄日やくびのようだから」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
思ったとおり、外海の側は大きく波が立ちさわいでいて、いかにも厄日やくびらしいさまを見せている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
淡色うすいろの牡丹今日ちる時とせず厄日やくびと泣きぬひがむ人
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)