卜部うらべ)” の例文
こう武蔵守むさしのかみ師直もろなおといういやなじじいが、卜部うらべの兼好という生ぐさ坊主に艶書の注文をしたなどというはなしを生ずるに至っているのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
後世の卜部うらべ進出時代はいさ知らず、是が皇室御親おんみずからの祭の年久としひさしい伝統までに、干与かんよし得べかりし理由はあり得ない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一方また、神祇官の卜部うらべなかだちにして、陰陽おんみょう道は、知らず悟らぬうちに、古式を飜案して行っていた。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「おや、吉田山の卜部うらべ兼好さまは、あなた様でいらっしゃいますか」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卜部うらべをも八十のちまた占問うらとへど君をあひ見むたどきしらずも
伊勢物語など (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
八月には神祇官から宮主一人卜部うらべ三人が差遣さしつかわせられ、それが二人ずつ両国に入って行くが、その一人を稲実卜部、一人を禰宜ねぎ卜部と号するとあって、職掌は明示せられていない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さにづらふ 君が御言みことと 玉梓たまづさの 使も來ねば 思ひやむ わが身一つぞ ちはやぶる 神にもなおほせ 卜部うらべせ 龜もな燒きそ こほしくに いたきわが身ぞ いちじろく 身にしみとほり むらぎもの 心くだけて 死なむ命 俄かになりぬ いまさらに 君か
伊勢物語など (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)