南枝なんし)” の例文
さらに仰ぐと、葉はみな、南へよく茂り、わけて勢いのいい南枝なんしの一つは、中天の龍みたいであった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
胡場こば北風ほくふういなゝき、越鳥ゑつてう南枝なんしくふ、故郷こきやうわすれがたきは世界の人情にんじやう也。
南枝なんし梅花うめは誘っても、片言かたこと初音はつねの声は、まだ稀にしか聞かれないが、野路や山路の雪が解けると共に、めっきりえ出してくるのが、今、天下にあまねき武者修行と称する客で
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどこの大樹の蔭、南枝なんしのさしている方角こそ、つねにお身をおくのに安泰な御座ぎょざです。なにかにつけ、南枝をたよりにおぼし召しあるがよろしからんとのおさとしにござりまする
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冬をこえて南枝なんしの梅花のほころぶを見るとともに、董家の人々も眉をひらいた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)