南家なんけ)” の例文
私の女主人公南家なんけ藤原郎女いらつめの、幾度か見た二上山上の幻影は、古人相共に見、又僧都一人の、之を具象せしめた古代の幻想であった。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
師の日野民部忠経ただつねは、元南家なんけ儒生じゅせいで、儒学においては、ちょう陰陽師おんみょうじの安倍泰親やすちかに日野民部といわれるほどであったが、磊落らいらくたちで、名利を求めず、里にかくれて、児童たちの教育を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴見もまた、藤原南家なんけの一の嬢子じょうしと共に風雨のくるう夜中をさまよいぬいた挙句あげくの果、ここに始めて言おうようなき「朝目よき」光景を迎えて、その驚きを身にみて感じているのである。
南家なんけ郎女いらつめは、一茎の草のそよぎでも聴き取れる暁凪あかつきなぎを、自身みだすことをすまいと言う風に、見じろきすらもせずに居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
寂寞せきばくたる光りの海から、高くぬきでて見える二上の山。淡海公の孫、大織冠たいしょくかんには曾孫。藤氏族長太宰帥、南家なんけの豊成、其第一嬢子だいいちじょうしなる姫である。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
南家なんけ郎女いらつめの手に入つた称讃浄土経も、大和一国の大寺と言ふ大寺に、まだ一部も蔵せられて居ないものである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
その耳面刀自と申すのは、淡海公の妹君、姫様方の祖父おほぢ南家なんけ太政だいじやう大臣には、叔母様にお当りになつてゞ御座りまする。人間の執念と言ふものは怖いものとは思ひになりませんか。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
武智麻呂存生ぞんしょうの頃から、此屋敷のことを、世間では、南家なんけと呼び慣わして来ている。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
わけは聞き出したね。南家なんけ嬢子をとめはどうなつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)