かは)” の例文
それらがひとたび彼の体や心の具合に結びつくと、それはことごとく憂欝な厭世的なものにかはつた。雨は何時まででも降りやまない。
「僕はメデュサがあなたを凝視みつめてゐて、あなたは石にかはつてゆくんぢやないかと思つた——多分、今度はあなたのお金がどれ位だかお訊きになるでせうね?」
紺とはいへど汗に褪め風にかはりて異な色になりし上、幾度か洗ひすゝがれたるため其としも見えず、襟の記印しるしの字さへ朧気となりし絆纏を着て、補綴つぎのあたりし古股引を穿きたる男の
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
人の話に、官吏なども大阪へ來ると往々商賣人にかはつてしまふと云ふ事である。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
薬師山霧にかはりて我が岸の板屋楓が薬師に化る
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
その翌日——雨月うげつの夜の後の日は、久しぶりに晴やかな天気であつた。天と地とが今朝よみがへつたやうであつた。森羅万象は、永い雨の間に、何時しかもう深い秋にもかはつて居た。