化生けしょう)” の例文
十万年に一度あらわるる怖ろしい化生けしょうの者じゃ。この天竺の仏法をほろぼして、大千だいせん世界を魔界の暗闇におとそうとくわだつる悪魔の精じゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
皆待ったり。この家はどうやら、例の妖物ばけもの屋敷らしいが、はてな。して見るとあの婦人おんな化生けしょうのものであったか知らん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むこうも化生けしょうのものですから、どんな秘法をこころえているかもわからないし、わたしはすこし遠ざかっていつも逃げられるように警戒はおこたらなかったのです。
人魚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
第二は保食神は、何故に女性におわしませしか。第三は保食神の屍体から、牛馬が化生けしょうしたとは、如何なる意味を有するかの点である。ここにはこの三つを押しくるめて概説する。
そのサルーンの一番手近い向う向きになっている長椅子の派手な毛緞子ダマスクの上からスックリと立上った艶麗、花を欺くような令嬢……だか化生けしょうの女だかわからない女が吾輩と直面した。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白毛茸生じょうせい僧の払子ほっすのごとく美麗言語に絶えたるを巨勢の医家に蔵すと観た者に聞いた人からまた聞きだ。すべて化生けしょうの物は脇を打つべく銃手必死の場合には鉄丸を射つべしというた。
化生けしょうの物とも思われませぬが、あの女は何者にござりますか?」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もしこの世にそのような人間があるとすれば、それは仏陀の権化ごんげか、但しは妖魔の化生けしょうであると、彼は鋭く言い切った。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
読者は直ちに化生けしょうのものと想わるるに相違ない。
化生けしょうの物がこの空き屋敷の奥にかくれ住んでいて、自分をたぶらかすのではないかとも疑われた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)