刻々こっこく)” の例文
陰森いんしんな、何か、やりきれないほどな、短くて長い気のする刻々こっこくが過ぎている。……ケロ、ケロロ、と池の初蛙もまた啼きだしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりが草に座ってかつ飲みかつ語ってるうちに見物人は刻々こっこくに加わった。中学の生徒は制服制帽整然とうちそろうて一塁側に並んだ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
だが殉ずるところに刻々こっこくの発見がある。本格の芸術の使命は実に「生」を学び、「人間」を開顕かいけんして、新しき「いのち」を創造するところにる。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
妖麗ようれい夜霞よがすみをふいて、三方みかたはら野末のずえから卵黄色らんこうしょく夕月ゆうづきがのっとあがった。都田川みやこだがわのながれは刻々こっこくに水の色をぎかえてくる、——あい、黒、金、銀波ぎんぱ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こうしている間も機会は刻々こっこくいっしつつあるやも知れぬ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三つの命は刻々こっこくとせまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)