)” の例文
家は数十丈の絶壁にいと危くもかけづくりに装置しつらいて、旅客が欄にり深きに臨みて賞覧をほしいままにせんを待つものの如し。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
れど是等これらの道具立てに不似合なる逸物いちもつは其汚れたる卓子てえぶるり白き手に裁判所の呼出状を持ちしまゝ憂いに沈める一美人なり是ぞこれ噂に聞ける藻西太郎の妻倉子なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ハイカラの久松にりつくには、やはり片仮名のインフルエンザの方が似合うらしいと、私の父は笑っていた。そうして、その父も明治三十五年にやはりインフルエンザで死んだ。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
矢叫やたけときこえの世の中でも放火殺人専門の野蛮な者では無かった。机にりて静坐して書籍に親んだ人であった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すでに其の病いがお染と名乗る以上は、これにりつかれる患者は久松でなければならない。そこで、お染の闖入ちんにゅうを防ぐには「久松留守」という貼札をするがいいと云うことになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この段取の間、男は背後うしろ戸棚とだなりながらぽかりぽかり煙草たばこをふかしながら、あごのあたりの飛毛とびげを人さし指の先へちょとはいをつけては、いたずら半分にいている。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
家門隆昌を祈って、それから食事の後には、ただもう机にって源氏を読んでいたというが、如何にも寂びた、細〻とした、すっきりとした、塵雑じんざつの気のない、平らな、おちついた
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)