凌霄のうぜん)” の例文
目覚めると、庭芝のうへ、やはらかな雨がりてゐる。目にしみる、いろどり。睡つてゐる芝艸。——みてゐると、ぽたり、それへ凌霄のうぜんかづらの花がこぼれおちた。緑中一点紅。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
すぐ上の処に、凌霄のうぜんの燃えるような花が簇々むらむらと咲いている。蝉が盛んに鳴く。その外には何の音もしない。Pan の神はまだ目をまさない時刻である。僕はいろいろな想像をした。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くもあめもものかは。辻々つじ/\まつり太鼓たいこ、わつしよい/\の諸勢もろぎほひ山車だし宛然さながら藥玉くすだままとひる。棧敷さじき欄干らんかんつらなるや、さきかゝ凌霄のうぜんくれなゐは、瀧夜叉姫たきやしやひめ襦袢じゆばんあざむき、紫陽花あぢさゐ淺葱あさぎ光圀みつくにえりまがふ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)