内裏様だいりさま)” の例文
内裏様だいりさまがどちらであろうと、わしらには何のかかわりもない」「ひどい貢税みつぎや戦のない世でさえあるならば……」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたんに、怒りにもえる彼女の眼にうつったのは、机のうえに二つ仲よく並んでいる、小さな博多人形のお内裏様だいりさま
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
更に眼を定めてよく見ると内裏様だいりさまもあれば、官女かんじょもあり、五人囃子ばやしもあり、衛士えじもあり、小町姫もあり、また雛道具としては箪笥たんす、両替、膳、鏡台、ボンボリ、屏風びょうぶ
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
奥のへいろいろな書附けをした箱を一ぱい出し散らかして、その中からお豊さんが、内裏様だいりさまやら五人囃ごにんばやしやら、一つびとつ取り出して、綿や吉野紙をけて置き並べていると
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
緋羅紗ひらしゃを掛けた床の雛段には、浅草の観音堂のような紫宸殿ししいでんいらかが聳え、内裏様だいりさまや五にんばやしや官女が殿中に列んで、左近さこんの桜右近うこんの橘の下には、三人上戸じょうご仕丁じちょうが酒をあたゝめて居る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)