兜形かぶとがた)” の例文
黒革に白革の横筋を入れ、兜形かぶとがたの八幡座に、眉庇まびさし猩々緋しょうじょうひ、吹き返しは白羅紗しろらしゃ縮緬ちりめんの忍び緒をあぎとふかく結んでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あしは太く、折から一員の騎兵の通り合せ候が、兜形かぶとがたの軍帽のいただきより、つめの裏まで、全体唯その前脚まえあしうしろにかくれて、わずかこまの尾のさきのみ、此方こなたより見え申し候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぶるぶると震動したかとおもわれて、振りかえると、兜形かぶとがたをした焼岳の頭から、白い黄な臭そうな硫烟が、紫陽花あじさいのような渦を巻いて、のろしとなって天に突っ立っている。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
避雷針のようなものの付いた兜形かぶとがたの帽子を着た巡査が、隊の両側を護衛している。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)