傘下さんか)” の例文
さらに三斎について注目すべきは、彼が徳川の傘下さんかりながら、幕府の不遜ふそんな対朝廷策に、大きな忿懣ふんまんを抱いていたことである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかと思うと、それほどけばけばしく女性尊重を放送しないフランス人が、家庭は全く主婦の女王の傘下さんか従順じゅうじゅんあたたまって易々諾々いいだくだくである。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
霽月らの諸君にして子規居士の傘下さんかに集まった一人として別に意に介する所もなかったのであろう。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
紅葉の芸術的天分はエポックを画するだけの十分な力を持っていたが、それよりもなお一層すぐれていたのは傘下さんかの英才を統率して芸術的地盤を固めた政治的手腕であった。
提結する聯盟するといっても、おのずから織田家はその優位のうえにおいて、松平家を傘下さんかへ誘おうとするのであって、そこにむずかしい外交の呼吸もある。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折からわが大君袁紹におかれては、常に荊州けいしゅうの劉表と襄城の張繍とは、共に真の国士なり、と仰せられていましたが、せつに両雄を傘下さんかにお迎えありたい意志があります。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに彼が吉野へ来てから着々とすすめていた南党再起の布石ふせきもととのい、熊野海賊の洋上勢力も傘下さんかに加え、また近くには、河内の東条に前衛本陣をきずいて、そこには
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思いがけない人間の生血を土中に吸って喊呼かんこして歓ぶのか、啾々しゅうしゅうとと憂いて樹心がくのか、その巨幹を梢の先まで戦慄させ、煙のような霧風を呼ぶたびに、傘下さんかの剣と人影へ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、多少は傘下さんかへ来ていたろうと思われる。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)