伏籠ふせご)” の例文
すずめの子を犬君いぬきが逃がしてしまいましたの、伏籠ふせごの中に置いて逃げないようにしてあったのに」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「そんなら、大屋さんの物置に伏籠ふせごの明いているのがあったから、あれを借りて来ましょう。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
ひまなときには伏籠ふせごをおいて着物に伽羅きゃらをたきしめたり腰元たちと香を聴いたり投扇興とうせんきょうをしたり碁盤ごばんをかこんだりしている、お遊さんのはあそびの中にも風流がなければあきませぬので
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が、縄目は見る目に忍びないから、きぬを掛けたこのまま、留南奇とめきく、絵で見た伏籠ふせごを念じながら、もろ手を、ずかと袖裏へ。驚破すわ、ほんのりと、暖い。ぶんと薫った、石の肌のやわらかさ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よきころも伏籠ふせごにかけてそらだきの香をめてこそ著まくほしけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)