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人烟
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じんえん
なるほど静かなものだなあ、まるで四方千里、
人烟を絶した
山谷の中に置き放されたような心持がする。
武芝は
武蔵国造の後で、
足立埼玉二郡は国中で早く開けたところであり、それから漸く
人烟多くなつて、奥羽への官道の
多摩郡中の今の府中のあるところに庁が出来たのであるが
狭いと
汚穢とは我慢するとしても、
一つ
家の寒さは
猛烈に彼等に
肉迫した。二百万の人いきれで寄り合うて住む東京人は、
人烟稀薄な武蔵野の
露骨な寒さを想い見ることが出来ぬ。
そしてここを別れて立ち、
午ごろには久しぶり
人烟にぎやかな古色の街へ入っていた。
上山を発してからは
人烟稀なる
山谷の間を過ぎた。
縄梯子に
縋って
断崖を
上下したこともある。
夜の宿は
旅人に
餅を売って茶を供する休息所の
類が多かった。宿で物を盗まれることも数度に及んだ。