人攫ひとさら)” の例文
そうなると、もしや人攫ひとさらいにでも拐引かどわかされたのじゃあないかと云う疑いも起こる。あるいは神隠しかも知れないと云う者もあります。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うけたまわれば貴所様きしょさまには、昨夜掃除町の方面にて、目下評判の人攫ひとさらいを、からめ取られたと申すこと、しかとさようでございますかな?
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おや、こんなのがあったかしら……この時分じゃなくて、ほらよく人攫ひとさらいが来るって、こわがったの。——吉さんを送って行ったかえり、坂の角から、あなたを
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あたかも子供らが、人攫ひとさらい鬼の来るのを聞いて、急いで頭からふとんをかぶるようなものである。
「このごろ、陸奥みちのくの方から、人買いとやら、人攫ひとさらいとやらが、たくさん、京都みやこへ来て徘徊うろついているそうな、もしものことがあっては、良人のやまいにもさわりますし、私とても、生きたそらはありません」といううちに彼女のひとみ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人攫ひとさらいということもしばしば行われた。お元は色白の女の子であるから、悪者の手にかどわかされたのかも知れないという説が多かった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「文三、文三、何をするんだヨー。人攫ひとさらいめー かどわかしめ! 助けてくださいヨー、助けてくださいヨー」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人攫ひとさらいの話などのうちに耕作し、紡ぎ、織り、かしぎして生活した。
私たちの建設 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
支那まちのことでありまして、上海中で物騒な方面では、代表的のところであり、白昼ホールダップが行われたり、人攫ひとさらいや殺人が行われたり、そうして一旦行われるや
おっ母さんも顔をくもらせて、お兼ちゃんは児柄こがらがいいから、もしや人攫ひとさらいにでも連れて行かれたのではあるまいかと言った。そんなことかも知れねえと、お父さんも溜息をついていた。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
実は人攫ひとさらい事件以来、お京、憂鬱になりましてな、ものさえろくろく申しません。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)