亡者もうじや)” の例文
単におのれの慾を充さうばかりで、あんな思切つて残刻な仕事が出来るものではないと想ふのだ。許多おほくのガリガリ亡者もうじやは論外として、間貫一においては何ぞ目的が有るのだらう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あツと顏見合はせる一座の中へ、月代さかやきひげも伸び放題乍ら清らかな紋服に着換へた林太郎は、細々とした自分の影を踏んで、——冥途めいどを行く亡者もうじやのやうに靜かに進み出たのです。
糠雨ぬかあめ朧夜おぼろよに、ちひさ山廓さんかくほこらまへやぶみののしよぼ/\した渠等かれら風躰ふうてい、……ところが、お年貢ねんぐ、お年貢ねんぐ、ときこえて、未進みしん科条くわでう水牢みづらうんだ亡者もうじやか、百姓一揆ひやくしやういつき怨霊おんりやうか、とおもく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)