亜鉛あえん)” の例文
旧字:亞鉛
雨戸の外は五月雨さみだれである。庭の植込に降る雨の、鈍い柔な音の間々あいだあいだに、亜鉛あえんといを走る水のちゃらちゃらという声がする。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『多分キップの装置だろうね。亜鉛あえん硝子瓶ガラスびんに入れて置いて、その上に稀硫酸きりゅうさんを入れるのさ。うまいこと水素瓦斯が出てきてはやみ、やんではまた出てくるんだよ』
街の探偵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
而して右板戸の縁辺ふちへんの支棒に接触する部分は、磨滅を防ぐためと支棒の作用の堅確を期するため、新しく亜鉛あえん板を以ておおいありたるも、かえって軽微の力を以て
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が長崎に居るとき塩酸亜鉛あえんがあれば鉄にもすずを附けることが出来ると云うことをきいしって居る。れまで日本では松脂まつやにばかりを用いて居たが、松脂ではあかがねるいに錫を流して鍍金めっきすることは出来る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
向ふの縮れた亜鉛あえんの雲へ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)