井楼せいろう)” の例文
後に“雲梯うんていけい”とよばれたものである。各所に巨大な井楼せいろうを組んで、崖へ梯子はしごを架けわたし、谷を踏まずに迫ろうとするのらしい。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
板倉重昌に代つた松平伊豆守は石火矢台といふものを築かせて大砲をすゑ、井楼せいろうをつくつて、こゝから敵状を偵察して大砲を打たせたが、駄目だつた。
島原の乱雑記 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
城外に高い井楼せいろうを組ませて、その上から城内の敵の防禦ぶりを望見していた周瑜は、こうつぶやきながらなお、眉に手をかざしていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉はすぐ歩を運び、やぐらの下へ寄って宙を見上げていた。野天の井楼せいろうなので、階段もない。組まれている脚木あしぎを頼りにじ登るのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦わぬうちからひるみ立って見えたので、趙雲、魏延などが、井楼せいろうの上に昇ってみると、なるほど、兵の怯むのも無理はない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
井楼せいろう梯子はしごのぼってみると、そこにも、眼を光らしていなければならないはずの見張役みはりやくが、やぐらばしらの根もとに、つめを立ったまま、いきえていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶望的ぜつぼうてきな声と一しょに、思わず陣貝じんがいをとり落とすと、井楼せいろうやぐらの下の岩へ、貝はみじんとなってくだけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木之本は、山の東麓とうろくに沿う街道の一宿駅で、山上軍の一部は、ここにたむろし、宿端しゅくはずれのあざ地蔵じぞうという所には、屋根なしの井楼せいろう(物見やぐら)を設けて斥候陣地としていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは都市城壁をもつ中国では古くから行われている戦法で、車をつけた移動井楼せいろうなどもあった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この城の一方が天龍川に臨んでいるので、飲料その他、城兵の生命とする水は、城壁の一端から懸出かけだしてある井楼せいろうに車をかけ、井戸水を汲むように川から上げていたものである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、黒田官兵衛が、奔走ほんそうして、買入れて来たものであろう。旧式な石火矢いしびや大筒おおづつを捨てて、陣前の井楼せいろうに、南蛮製なんばんせいの大砲を城へ向けてすえつけたのも、秀吉がいちばん早かった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして井楼せいろう(組み櫓)のうえに登って、戦況をながめていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大手門のまえに、幾ヵ所も、井楼せいろうを構築し始めたのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まえの井楼せいろうの下まできたとき、咲耶子は足をとめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)