不敏ふびん)” の例文
宮、貴様は自殺を為た上身を投げたのは、一つの死ではあきたらずに、二つ命を捨てた気か。さう思つて俺は不敏ふびんだ!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「宗輔は不敏ふびんかもしれませんが男です、そのような大事について、たとえ母親にもせようちあけるようなみれん者なら、わたくしはわが子とは申しません」
もっとも彼は二三暗示めいた言葉を洩らさぬではなかったが、不敏ふびんな私には、その暗示を解釈する力はないのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「自分をおいてはない。不敏ふびんといえども、それに比すものは自分以外の誰がいよう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日こんにちの人才をほろぼす者は、いはく色、曰く高利貸ぢやらう。この通り零落おちぶれてをる僕が気毒と思ふなら、君の為になやまされてをる人才の多くを一層不敏ふびんと思うて遣れ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
究竟つまり貴方と私とは性が合はんので御座いませうから、それはもう致方いたしかたも有りませんが、そんなにれてまでもやつぱりかうして慕つてゐるとは、如何いかにも不敏ふびんな者だと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)