上部うはべ)” の例文
さうした上部うはべけの甘言に乗つて、ウカ/\と夫人の掌上などに、止まつてゐる中には、あの象牙骨の華奢な扇子か何かで、ピシヤリと一打ひとうちにされるのが
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
上部うはべからると、夫婦ふうふともさうもの屈托くつたくする氣色けしきはなかつた。それは彼等かれら小六ころくことくわんしてつた態度たいどついてもほゞ想像さうざうがつく。流石さすが女丈をんなだけ御米およねは一二
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
気の所為せゐか、茶をはこぶ時にも、妙に疑ぐり深い眼付めつきをして、見られる様でならなかつた。然し三千代は全く知らぬ顔をしてゐた。すくなくとも上部うはべ丈は平気であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、相手の本心を知らない父は、その空々しい上部うはべの理由だけに、うか/\と乗せられて、もしや相手の無躾な贈り物を、受け取りはしないかと、瑠璃子はひそかに心を痛めた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)