上包うわづつみ)” の例文
入れて置いた紙の箱はつぶれ、上包うわづつみすすけ破れて、見る影もありませんが、中の物は無事なので、天佑てんゆうとはこのこととばかりにうれしく思いました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「あったかね、だが上包うわづつみだけでは安心出来んよ。あいつらはうまくすり変えるからね」
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
... 玩弄物おもちゃにしたのです」妻君「道理で上包うわづつみこしらえからおかしゅうございましたよ。 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
上包うわづつみして一束、色紙、短冊。……俳句、歌よりも、一体、何と言いますか、かむりづけ、くつづけ、狂歌のようなのが多い、そのなかに——(能登路の記)——があったのです。大分古びがついていた。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浅い店で、横口の奥が山のかぶさったように暗い。並べた巻紙の上包うわづつみの色もせたが、ともしく重ねた半紙は戸棚の中に白かった。「御免なさいよ、今日は、」と二三度声を掛けたが返事をしない。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)