三股みつまた)” の例文
その多多利というのは椯とも線柱とも書いて、糸を巻くために用いる三股みつまたかせのごとき物だと言えば、何かこれらの金属品を通じて、同じタタラの称を下すべき仔細があったのかも知れぬ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
文子は綱宗が高尾を身受して舟に載せて出て、三股みつまたで斬つたと云ふ俗説を反駁はんぱくするつもりで、高尾が仙台へ連れて行かれて、子孫を彼地かのちに残したと書いたのだが、それは誤を以て誤に代へたのである。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのもあらず一同を載せた屋根船は殊更に流れの強い河口のうしおに送られて、夕靄ゆうもやうちよこたわ永代橋えいたいばしくぐるが早いか、三股みつまた高尾稲荷たかおいなりの鳥居を彼方かなたに見捨て、暁方あかつきがたの雲の帯なくかなかずの時鳥ほととぎす
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
志す人があって、この川ぞいの三股みつまたへ、石地蔵が建つというわいの。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海のぬしの神様の三股みつまたをちょいと取るかと思うと
三股みつまたの岸近くには(第四図)白魚船しらうおぶねあみをひろげたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三股みつまたの杖を鍛ひしはわれ等なり。