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やへざき
早其夜も
既に
亥刻過皆々
床へ入たる
樣子にて
座敷々々も
寂と成ければ
瀬川は
用意の
短刀を
隱し
持八重咲の座敷へ
行八重咲さん/\と
呼に
八重咲は何の
氣も
付ずアイと
答へて
廊下へ出るを
何か用を
爭ひ入り來る故實に松葉屋の
大黒柱金箱と
持はやされ
全盛双ぶ方なく時めきける
中早其年も暮て享保七年四月
中旬上方の客仲の町の
桐屋と云ふ茶屋より松葉屋へ
上りけるに三人連にて
歴々と見え
歌浦八重咲幾世とて何も
晝三の
名題遊女を