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ごしゆつぱつ
けれど
賓人よ、
私はよく
存じて
居ります、
今夜の
弦月丸とかで
御出發になつては、
奧樣も、
日出雄樣も、
决して
御無事では
濟みませんよ。
ま、ま、お
待ちなさい、お
待ちなさい、
今から
旅亭へ
皈つたとて
何になります。
久ぶりの
面會なるを
今日は
足る
程語つて
今夜の
御出發も
是非に
私の
家より。
『あの、
妾の
奧樣と
日出雄樣とは
今夜の
弦月丸で、
貴方と
御同道に
日本へ
御出發になる
相ですが、それを御
延べになる
事は
出來ますまいか。』と
恐る/\
口を
開いたのである。