ふみ)” の例文
すべて雪道は人のふみかためたるあとのみをゆきゝするゆゑ、いかなる広き所も道は一条ひとすぢにて其外そのほかをふめばこしをこえて雪にふみ入る也。
仕方しかたがない矢張やつぱわたし丸木橋まるきばしをばわたらずはなるまい、とゝさんもふみかへしておちてお仕舞しまいなされ、祖父おぢいさんもおなことであつたといふ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一向にわきまへずして感應院後住ごぢうの儀は存じもよらず爰にさればひとつの御願ひあり何卒當年たうねんより五ヶ年の間諸國修行致し諸寺しよじ諸山しよざん靈場れいぢやうふみ難行苦行を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一 道をおなじうし義相かなふを以てあんに集合せり、故に此理を益研究けんきうして、道義に於ては一身を不、必ずふみ行ふべき事。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
なんかと騒ぎのなかで喧嘩が始まり、一層にごった返して、子供や老人としよりふみつぶされるやら、突飛つきとばさるゝやら、イヤもう大変の騒動でございます。
廉平は小さなその下界に対して、高く雲に乗ったように、円く靄に包まれた丘の上に、ふみはずしそうにがけさき、五尺の地蔵の像で立ったけれども。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どうするんだね」勘次かんじ一人ひとりそばつていた。ひよつとくびもたげたのはばあさんであつた。ばあさんはこしをのしてつよ西風にしかぜによろけるあしふみしめて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四人はウンとふみこらえました。落ちる四人とこらえる四人との間で、ロープは力足らずしてプツリと切れてしまいました。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
姫はもう死に物狂いになって、蛙たちの頭をふみつけて表に飛び出しましたが、門のところまで来ると又驚きました。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
左右に広げた翼はおよそ二米突メートルに余り、全身真黒な羽毛に包まれ、鷲のような鋭い爪のある両足をふみひらいている。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その幕を張つて居る方の一人は下に居つて幕の端を持ち、他の一人は梯子はしごに乗つて高い処に幕をかけて居る。その梯子の下には草履ぞうりがある。ほうきがある。ふみつぎがある。塵取ちりとりがある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
と女ははなやかなる声の優しくまずとい懸けたり。されど仙太は応答こたえもなさで、首をたれたるまま、時々思い出したらんように苫屋の方を振返りつつ、あてもなく真砂まさごの間をざくざくとふみ行きぬ。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
きりむすぶ太刀の先こそ地獄なれ たんだふみこめ先は極楽ごくらく
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真珠の多い水底をおふみになるや否や
昨夜さくやちらしおきたる苧幹をがら寸断ずた/\をれてあり、これひとさんじてのち諸神しよじんこゝにあつまりてをどり玉ふゆゑ、をがらをふみをり玉ふなりといひつたふ。
これはらぬと力足ちからあしふみこたゆる途端とたん、さのみにおもはざりし前鼻緒まへはなをのずる/\とけて、かさよりもこれこそ一の大事だいじりぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「失敬な奴ぢゃ、てッたような訳だわね、不都合だよ、いけすかない、何だ手前は、」ふらふらするのをふみこたえて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
漸くにふみしめ勝手かつて屋根やねいたらんとするをり思ひも寄らぬ近傍かたへまどより大の男ぬつくと出ければ喜八はハツと驚き既に足を踏外ふみはづさんとするに彼の男は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
刑事はちらと秋山を見たが、すぐに真暗な化粧室の中へふみこんで、そして電灯のスイッチをひねった時
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さても方様かたさまの憎い程な気強さ、ここなり丈夫おとこの志をぐるはとむれ同志どうしを率いて官軍に加わらんとし玉うをとどむるにはあらねど生死しょうじ争う修羅しゅらちまたふみりて、雲のあなたの吾妻里あづまじ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雨ふれば泥ふみなづむ大津道おおつみち我に馬ありめさね旅人
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
昨夜さくやちらしおきたる苧幹をがら寸断ずた/\をれてあり、これひとさんじてのち諸神しよじんこゝにあつまりてをどり玉ふゆゑ、をがらをふみをり玉ふなりといひつたふ。
ただただ、山一つ越せばいわ、ですすき焼石やけいしふみだいに、……薄暮合うすくれあい——猿ヶ馬場はがらんとして、中に、すッくりと一軒家が、何か大牛がわだかまったような形。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して居けるゆゑ大丈夫請出す氣遣きづかひなしとふみたればこそ嚴重きびしく催促さいそくをしたりしに今請出されては甚だ心當こゝろあて相違さうゐしたりと番頭久兵衞は小首をかたぶけしが又心中に考ふるやう此品物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あらかじめロープをもって銘〻めいめいの身をつないで、一人が落ちても他がふみとどまり、そして個〻の危険を救うようにしてあったのでありますけれども、何せ絶壁の処で落ちかかったのですからたまりません
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
されば芝居をつくる処、此役者が家はさらなり、親類しんるゐ縁者えんじや朋友はういうよりも人を出し、あるひは人をやとひ芝居小屋場の地所の雪をたひらかにふみかため
色が真蒼まっさおになっていようと、ふみにじられてひいひいうめいていようと……そっちの事じゃ、わしは構わぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば芝居をつくる処、此役者が家はさらなり、親類しんるゐ縁者えんじや朋友はういうよりも人を出し、あるひは人をやとひ芝居小屋場の地所の雪をたひらかにふみかため
これや串戯じょうだんをしてはけないぜと、思わず独言ひとりごとを言いながら、露草をふみしだき、すすき掻分かきわけ、刈萱かるかやを押遣って、章駄天いだてんのように追駈けまする、姿は草の中に見え隠れて
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
案内は白衣にへいさゝげて先にすゝむ。清津きよつ川をわたりやがてふもとにいたれり。巉道さんだうふみ嶮路けんろに登るに、掬樹ぶなのき森列しんれつして日をさへぎり、山篠やまさゝしげりてみちふさぐ。
豆府屋蹌踉よろよろしてふみこたえ、「がみがみうない、こっちあ商売だ。」と少しく勃然むっとする。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝶吉はつまずくように駒下駄を脱いで、俯向うつむけに蹌踉よろけ込んで、障子に打撞ぶつかろうとして、肩をかわし、退すさって、電燈を仰いで、ふみしめて立った。ほッという酒の息、威勢よく笑って
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ま、ま、待ちおれうぬ。」と摺下ずりさがりたる袴のすそふみしだき、どさくさと追来る間に、婦人おんなは綾子の書斎へ推込おしこみ、火桶の前に突立つったてば、振返る夫人の顔と、眼を見合せてきっとなりぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見事に小狗こいぬふみつけた。小村さんは狼狽うろたえながら、穴をのぞくように土間を透かして
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大釜おおがまに湯気を濛々もうもうと、狭いちまたみなぎらせて、たくましいおのこ向顱巻むこうはちまきふみはだかり、青竹の割箸わりばしの逞しいやつを使って、押立おったちながら、二尺に余る大蟹おおがに真赤まっかゆだる処をほかほかと引上げ引上げ
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俊吉は捗取はかどらぬ雪をふみしめ踏しめ、くるまを見送られた時を思出すと、傘も忘れて、降る雪に、つむりを打たせて俯向うつむきながら、義理と不義理と、人目と世間と、言訳なさと可懐なつかしさ、とそこに
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かか広野ひろの停車場ステエションの屋根と此のこずえほかには、草より高く空をさえぎるもののない、其のあたりの混雑さ、多人数たにんずふみしだくと見えて、敷満しきみちたる枯草かれくさし、つ立ち、くぼみ、又倒れ、しばらくもまぬ間々あいだあいだ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
仁王立にふみごたえて、わめいたそうにござります。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)