ぎやう)” の例文
あとでよく調べてみると、大樹寺たいじゆじといふのに入つて専修念仏せんじゆねんぶつぎやうをおこなひ済ましてゐたさうだ。よく/\自力じりきには懲りたものと見える。
苦行は僧や婆羅門ばらもんの徒のぎやうするものばかりではない。人間はすべてこれを行してゐるではないか。意識せると、意識せざるとの区別はある。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
良寛さんは、ぎやうを修めるごとに、むきになつてゐた。真理といふものが、何処どこかにあるに相違ない、ちやうど、桃の中にはたねがあるやうに。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
ひとらないぎやうをします——ひる寢床ねどこから當番たうばんをんな一人ひとり小脇こわきかゝへたまゝ、廣室ひろま駈込かけこんでたのですが、みんない! と呼立よびたてます。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
讀書と修業(ぎやう法)とのデイレンマや、一切の仕事の空しさに對する感じなどに溺れて、中々讀書や仕事に手がつくところまでは漕ぎつけ難い。
三太郎の日記 第三 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)
【毛織】cilicio 馬の毛等を結びあはせて造れる粗き衣にて昔隱者これを肌に着けそのたえず身を刺すを忍びて一種のぎやうとなせりといふ
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これで大和も、河内との境ぢやで、もう魂ごひのぎやうもすんだ。今時分は、郎女さまのからだは、いろりの中で魂をとり返してぴち/\して居られるぞ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
これはもし行者にことばをかけ、行者あやまつてことばをいだせば行やぶれたるゆゑ、はじめよりぎやうをしなほすゆゑ也。又无言むごんの行はせざるもあり。
「不動樣で思ひ出したが、今日は道灌山だうくわんやまに東海坊が火伏せのぎやうをする日ですよ。大變な評判だ、行つて見ませんか」
はじめのびん二人共ふたりとも無言むごんぎやう呑乾のみほしてしまふ。院長ゐんちやう考込かんがへこんでゐる、ミハイル、アウエリヤヌヰチはなに面白おもしろはなしやうとして、愉快ゆくわいさうになつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
普通の作家の如くぎやうの奇跡を以て伏姫の業因を断たしむることなく、かへつてかの八行の珠玉を与へて、伏姫の運命の予言者とならしめ指導者とならしめたるもの
散文をただやたらにぎやうをかへて書いて讀みにくくして、意味ありげに見せかけてゐるとしか思はれず、もとから詩人と自稱する人たちを、いけ好かなく思つてゐた。
郷愁 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
其次そのつぎには經濟けいざい心得こゝろえひとは、衞生ゑいせい注意ちゆういするひとは、用心ようじんこのむものは、と三ぎやうならべていて其後そのあと瓦斯竈ガスがま使つかへといて、瓦斯竈ガスがまからてゐるまでへてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
給仕女『旦那はん達はこんな処へぎやうしにきやはただつか? 一寸賑やかにしておくれやす。』
からくも抑へて、常の如く嵯峨の奧に朝夕のぎやうを懈らざりしが、都近く住みて、變り果てし世の樣を見る事を忍び得ざりけん、其年七月の末、久しく住みなれし往生院を跡にして
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そんな風にして、彼女はまるで無言のぎやうをしてゐる印度インドの坊さんのやうにだまつてゐた。
……ぎやうだ、行だ、行をしてゐるんだ。俺もしないから、お前もするな、呼吸をするな!……覚えてゐるわ、私。……あんなに落着いてゐるやうでも、あなたやつぱりアガツてしまふんだわ。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
鬱蒼蟠居うつさうばんきよの古木とある首尾の松は、清元「梅の春」に首尾しゆびまつ竹町のとうたはれてゐるが、この歌詞はたつた一つ例にあげただけで、首尾の松は下谷根岸の時雨の松(おぎやうの松)と共に
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
しかし時間じかんればうごかぬわけにいかない人車鐵道じんしやてつだうさへをはれば最早もうゐたも同樣どうやうそれちからはこはひると中等ちゆうとう我等われら二人ふたりぎりひろいのは難有ありがたいが二時間半じかんはん無言むごんぎやうおそるとおもつてると
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かく万事が切迫してゐて、暗澹たる力があつて、とても日本の作家なんぞには、一行も書けないやうな代物しろものだつた。勿論自分は大に感心して、立ちながら、ぎやうあひだへ何本も色鉛筆の線を引いた。
寒山拾得 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其れから一切の句読くどく其他そのたの記号をも排斥するかはりに代数学の符号があらたに採用され、ぎやうれんわかつのも不経済だとあつてれんの場合だけに約一すんばかり字間をけ、其他そのたは散文の如くに続けて書く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ひとにもせずおとさぬやう御覽ごらんれろと吾助ごすけひしは、よりもきに相違さうゐはなし、是非ぜひ人形にんぎやうたまはれとて手渡てわたしするに、何心なにごヽろなくらきていちぎやうよむとせしが、物言ものいはずたヽみて手文庫てぶんこをさめれば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
飛びつつをぎやう失ひし夕影はまさにをみなはぎを見けむか
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ぎやうおもてに浮き上がれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
畜類ちくるゐながらも菩薩ぼさつぎやう
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
甘いサぎやうの音で
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
二三ぎやうなれど。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
……今日けふかへりがけに西片町にしかたまち親類しんるゐ一寸ちよつとらう。坂本さかもとから電車でんしやにしようと、一度いちど、おぎやうまつはう歩行あるきかけたが。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さア、其處までは解りません。何分そんな事は一向氣にかけない東海坊樣でしたから、火伏ひぶせぎやうなどと言つて諸人を
「求めざるものは得、欲するものは失ふ。」かうしたかれのさとりは、かれの日夜のぎやうと共に益々生気を帯びて来た。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
このゆゑに此たばねたる稿わらおびにはさみてはなたず。またぎやうの中は无言むごんにて一言ひとこともいはず、又母のほか妻たりとも女の手より物をとらず、精進潔斎しやうじんけつさい勿論もちろん也。
なつて居ても、物珍ものめでする盛りの若人たちには、口を塞いで緘黙行しゞまを守ることは、死ぬよりもつらいぎやうであつた。刀自らの油断を見ては、ぼつ/\話をしてゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
それでまためづらしくなつて、一旦いつたんせたのをまたけてると、不圖ふと假名かなまじらない四角しかくが二ぎやうほどならんでゐた。それにはかぜ碧落へきらくいて浮雲ふうんき、つき東山とうざんのぼつてぎよく一團いちだんとあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぎやうおもてに浮き上がれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ぎやうの松と梅屋敷の間を、平次は何べん歩いたことでせう。やがて四方が雀色になつた頃、紫御殿の裏から、そろ/\潜り込む隙を平次は狙つて居りました。
理解といふことは、例の経文などにある『』である。主観の文殊の方にある解と、客観かくくわんの普賢の方にある『ぎやう』と相対してゐる。『行』は行なふと言ふよりもめぐるである。
自からを信ぜよ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
病人びやうにん轉地先てんちさきとしした。繪端書ゑはがきいたから毎日まいにちやうこした。それに何時いつでもあそびにいとかへしていてないことはなかつた。御米およね文字もじも一二ぎやうづゝかならまじつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此為来りを何時となく女たちの咄すのを聞いて、姫が女のぎやうとして、此の野遊びをする気になられたのだ、と思つたのである。かう言ふ考へに落ちつくと、皆の心が一時ほうと軽くなつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ぎやうの内人のしたるをきけば、たとひ二里三里ある所にても、つねにしる人しらぬ人をろんぜず、志願しぐわんの所にまうでたるかへるさなど、其家にいたりねんごろに回向ゑかうす。これをもぎやうの一ツとす。
と二ぎやうもうみながら、つひ、ぎんなべ片袖かたそでおほふてはいつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぎやうぎやう
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
火伏ひぶせぎやうとか何んとか言つて、散々賽錢さいせん祈祷料きたうれうをせしめた上、四方から火を掛けさせ、煙が一パイになつた時を見測らつて護摩壇の拔け穴から、茶店の床下へ拔ける筈だつたんだ。
昔は、聖者はあらゆる苦行をぎやうした。一生を苦行のうちに終つた人達もあつた。婆羅門ばらもんの徒の苦行——そこまで考へて行つてかれは思つた。自分のこれまでの生活は、あらゆる苦行ではなかつたか。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「同ぎやうが七八人居るんですから、宿から脱出せるわけはありません」
さうぎやうだ、それ位の違ひはあるだらうよ」