“由(よ)” の例文
何に由(よ)ることも誰れの学説に頼ることもなしに自分は何の躊躇もなく自分の本能を元にして宇宙を測ることをしようと自負して居る。
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
手紙で知らして来た容子に由(よ)ると、その後も続いて沼南の世話になっていたらしく、中国辺の新聞記者となったのも沼南の口入(くちいれ)なら
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
後(あと)では寧(むし)ろ悔(く)いるまでも羞恥(はぢ)と恐怖(おそれ)とそれから勘次(かんじ)を憚(はゞか)ることから由(よ)つて來(きた)る抑制(よくせい)の念(ねん)とが慌(あわ)てゝ其(そ)の手(て)を振(ふ)り挘(もき)らせるのであつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其(その)前にバナナや桜実(さくらんぼ)を堆(うづたか)く盛つた果物屋の車が其れを輓(ひ)かせて来た頸に綱を附けた三匹の犬と一人の老婆とに由(よ)つて店を出して居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
何番の何組がどの消し口を取ったとか、それによって手柄が現われたので、消防夫の功績は一にこれに由(よ)って成績づけられたものです。
貝層(かひそう)は極(きは)めて淺(あさ)いが、其下(そのした)に燒土(やけつち)の層(そう)が有(あ)つて、其中(そのなか)に少(すくな)からず破片(はへん)がある。幻翁(げんおう)の言(げん)に由(よ)ると、香爐形(こうろがた)の出(で)た層(さう)と同一(どういつ)だといふ。
此(これ)を以(もつ)て相持(あひぢ)する、此(こ)れ説(ぜい)の成(な)る也(なり)。伊尹(いゐん)は(九七)庖(はう)と爲(な)り、百里奚(りけい)は(九八)虜(りよ)と爲(な)る、(九九)皆(みな)由(よ)つて其上(そのかみ)に干(もと)めし所(ところ)也(なり)。
小大(の事)、之(これ)に由(よ)るも行なわれざる所あるは、和を知って和せんとするも、礼を以て之を節せざれば、亦(また)行なうべからざればなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
左の肩から台座に及ぶこの衣の線が、体躯の光りに応じて縦横に弧線を描き、ここに光りの循環に由(よ)るメロデーは完成されるのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
以上は抽斎の手記した文について、その心術身行(しんこう)の由(よ)って来(きた)る所を求めたものである。この外、わたくしの手元には一種の語録がある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すなわち前には回転せぬ棒をもって打っていたのが、これに由(よ)って始めて腰を曲げずに、藁やその他の穀(こく)を打つことができたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人よりに非ず、人に由(よ)るに非ず、イエス・キリスト及びこれを死人の中より甦(よみが)えらせ給いし父なる神に由りて使徒となれるパウロ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そして此等(これら)の損失(そんしつ)の殆(ほと)んど全部(ぜんぶ)は地震後(ぢしんご)の火災(かさい)に由(よ)るものであつて、被害民(ひがいみん)の努力(どりよく)次第(しだい)によつては大部分(だいぶぶん)免(まぬか)れ得(う)られるべき損失(そんしつ)であつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その由(よ)って来たるところは千差万別ですが、みな自分の数字を限りなく神聖なものとして、それに絶対の信を置いていることは同じです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
如何(いか)に説いても男は帰らぬ。さりとて国へ報知すれば、父母の許さぬのは知れたこと、時宜(じぎ)に由(よ)れば忽(たちま)ち迎いに来ぬとも限らぬ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
何事に由(よ)らず新工風(しんくふう)を運(めぐ)らして之(これ)を実地に行うと云うのは、その事の大小を問わず余程の無鉄砲でなければ出来たことではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第八条 (1) 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其(そ)ノ災厄(さいやく)ヲ避(さ)クル為(ため)緊急ノ必要ニ由(よ)リ帝国議会閉会ノ場合ニ於(おい)テ法律ニ代ルヘキ勅令(ちょくれい)ヲ発ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
思うにこれは西の面が亜細亜(アジア)大陸と相対し、また外国との交通が港を通して早くから行われていたのに由(よ)るのでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
△江戸川乱歩氏の作では苦楽の「闇に蠢(うごめ)く」を挙げる。例に由(よ)って瑰麗の文章である。そうして次号を待たせるだけの強い魅力を持っている。
この「人妻ゆゑに」の「ゆゑに」は「人妻だからと云(い)って」というのでなく、「人妻に由(よ)って恋う」と、「恋う」の原因をあらわすのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あるいは彼自身も、ああいう日記を書きたくなった心の経過、その由(よ)って来るところを理解していなかったのかも知れない。
鍵 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
世(よ)に傳(つた)はる攝養法(せつやうはふ)に種々(しゆ/″\)ありと雖(いへど)も、余(よ)の實驗(じつけん)に由(よ)れば、尤(もつと)も簡易(かんい)にして尤(もつと)も巧驗(こうけん)あるものは冷水浴(れいすゐよく)の他(た)にあらざる可(べ)し。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
一つフロツクコートで患者(くわんじや)も受(う)け、食事(しよくじ)もし、客(きやく)にも行(ゆ)く。然(しか)し其(そ)れは彼(かれ)が吝嗇(りんしよく)なるのではなく、扮裝(なり)などには全(まつた)く無頓着(むとんぢやく)なのに由(よ)るのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
且、また、自分の行くまでに雜誌を見て、自分が實際何をやつてゐるかといふことを知らせて置きたかつたにも由(よ)るのだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
その地の神怒れるに由(よ)ると信じ、虎初めて人を食えば神に捧物してこれを鎮(しず)むれど、二度目に人食わるれば神の怒りやまぬつもりで村を移すと。
抑(そもそ)もまた文三の僻(ひが)みから出た蜃楼海市(しんろうかいし)か、忽然(こつぜん)として生じて思わずして来(きた)り、恍々惚々(こうこうこつこつ)としてその来所(らいしょ)を知るに由(よ)しなしといえど、何にもせよ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
明日(あした)になるか明後日(あさって)になるか、ことに由(よ)ったら一週間も掛るか、まかり間違えば無期限に延ばしても差支(さしつかえ)ないと高(たか)を括(くく)っていたせいかも知れない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うまく行きそうな家は、見かけからして既に胸襟(きょうきん)を披(ひら)いている感じなのである。私がこの路地を黙殺してしまったのは主として地理的関係に由(よ)る。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
他(か)れが悲みも他(か)れが涙も他(か)れが失望の絶叫も総(すべ)て最(いと)巧(たくみ)なる狂言には非ざるや、藻西太郎の異様なる振舞も幾何(いくら)か倉子の為めに由(よ)れるには非ざるや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
政府より売出すにはやはり法定(ほうてい)の価格に由(よ)るの外なくしてみすみす大損を招かざるを得ざるより、その処置(しょち)につき勘考中(かんこうちゅう)、カションこれを聞き込み
次第に由(よ)っては握り潰さないものでもないという助五郎の言葉に釣られて、やがてその夜のことを逐一話し出した。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
要するに教育は時代の精神に由(よ)りて、その国情に適合する方法を採らなければならぬ。その時代の要求を容(い)れなければ、非常な不幸に陥るものである。
女子教育の目的 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
我が国の偉大な事は教育に由(よ)るのであります。その中(うち)でも大学の支度をする寄宿舎学校が国の基(もとい)になるのであります
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その原因を臆測するにもまたその正否を判断するにも結局当の自分の不安の感じに由(よ)るほかはないのだとすると
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
彼は実に最善最賢者の誘導の下に、衆民に由(よ)りて、衆民の進歩を以て、平民主義の第一義と為せり。彼は徹頭徹尾平民主義の信者なりし、預言者なりし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
険しい道に由(よ)り狭い門をくぐって私たちは天国に入るのである。この世の智恵を滅ぼすとき神の智恵は生れる。まことに天国は心の貧しき人のものである。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
信仰に由(よ)りて我等が認むる所の物もかしこにては知らるべし、但し證(あかし)せらるゝに非(あら)ず、人の信ずる第一の眞理の如くこの物自(おのづ)から明らかならむ 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
実に学問の独立に由(よ)るものなれば、その国を独立せしめんと欲せば、必(かな)らず先(ま)ずその民を独立せしめざるを得ず(大喝采)、その民を独立せしめんと欲せば
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
『イヤ其(それ)は誰(だれ)だつて道具(だうぐ)に由(よ)ります。如何(いく)ら上手(じやうず)でも道具(だうぐ)が惡(わる)いと十尾(ぴき)釣(つ)れるところは五尾(ひき)も釣(つ)れません。』
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たとえ人手に渡さばとて、やがてこの二面の琴は、師の君が同門の人に由(よ)りて購(あがな)わるることを保証します。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
伊太利製や仏蘭西製の上等は滅多にありません。その味の悪い事と申したらポツポツして粘着気(ねばりけ)がありません。これもやっぱり小麦粉の性質に由(よ)るのでしょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
余は斯うした場合の價値は其作品即ち小説なり隨筆なりが一般讀者の感興を惹くことの多少と、勸善懲惡的な誘導力の多少とに由(よ)り決するものと思考するものである。
識者は思想問題や社会問題の由(よ)ってくるところを深く洞察すべきである。ああして一銭も要らずに誰れでもが飛び入りで踊って遊べるというのは何といいことであろう。
祇園の枝垂桜 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
その母「塩の長次(ちやうじ)にはあらねど、夢中に馬を呑むと見て、懐胎したる子なるゆへ」大豆右衛門と称せしと云へば、この名の由(よ)つて来る所は必(かならず)しも多言するを要せざるべし。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その由(よ)って来るところを尋ねる時、少年のころ親しく見聞した社会一般の情勢を回顧しなければならない。即ち明治十年から二十二、三年に至る間の世のありさまである。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歴史に由(よ)って諸君の知る通り、昔から時々、天界で新たな星が忽然(こつぜん)と光り出す事が有ります。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
丁子のことは夙(つと)に漢時代にあった迷信で、『西京雑記(せいけいざっき)』に「火華則拝之」とあるのがそれだと、三村竹清氏の書かれたものにあった。由(よ)って来(きた)ること遠しというべきである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
製法 磨製石斧の製法(せいはふ)は現存石器時代人民の爲(な)す所に由(よ)つても知(し)るを得れと、遺跡(ゐせき)に於て獲(う)る所の截(き)り掛(か)けの凹(くぼ)み有る石片截り目を存する石斧(いしおの)、刄(は)の鈍(にぶ)きもの刄の鋭きもの
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
通俗小説を大衆文学というのはやや軽蔑(けいべつ)した意味が含まれているようにも受取れる。けれどもその文学に由(よ)って大衆が慰安を得るという点からいえばなかなか価値が大きい。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
一千数百名の将兵をして勅命違反の叛軍(はんぐん)たらしめんとするに至れるは、果たして誰の責任であろうか。事件は突如として今日現れたのではなくて、由(よ)って来れる所遠きに在る。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)