戦争いくさ)” の例文
旧字:戰爭
お前がその戦争いくさの話を語るのが、上手だという事をお聞きになり、お前のその演奏をお聞きになりたいとの御所望である、であるから
耳無芳一の話 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
まだるつこい飯なぞ食つてゐては、とて戦争いくさは出来ないといふ事に誰よりも早く気がついたのは、幕末の江川太郎左衛門であつた。
戦争いくさがないと生きている張り合いがない、ああツマラない、困った事だ、なんとか戦争いくさを始めるくふうはないものかしら。」
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
戦争いくさの話、泥棒の話がおもであって、果ては俗間の喧嘩の話から中には真実喧嘩をおっ始めて、ぶんなぐり合いをするというような始末です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
明日あす大楠山おおくすやま巻狩まきがりじゃ』などと布達おふれると、乗馬じょうば手入ていれ、兵糧へいろう準備したく狩子かりこ勢揃せいぞろい、まるで戦争いくさのような大騒おおさわぎでございました。
……杉山の子息……あれア、今は徴集されて戦争いくさ(日清戦争)に行つてるだ。あの山師にや、村ではもう懲々こり/″\して居るだア。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼は仕事着にはだし足袋、戦争いくさにでも行く様な意気込みで、甲斐々々しく畑に出る。少し働いて、大に汗を流す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「花吉の凄腕せいわん真に驚くべしだ」「露西亜ロシヤに対する日本の態度の曖昧あいまいなのも、君の為めだと云ふうはさだぞ」「松島君に忠告して早く戦争いくさする様にして呉れ給へ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
戦争いくさで死ぬかもしれんから香奠こうでんと思って餞別せんべつをくれろ、その代わり生命いのちがあったらきっと金鵄きんし勲章をとって来るなんかいって、百両ばかり踏んだくって行ったて。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今にも戦争いくさが起りそうに見える。焼け出された裸馬はだかうまが、夜昼となく、屋敷の周囲まわりまわると、それを夜昼となく足軽共あしがるどもひしめきながらおっかけているような心持がする。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
灯の影にひらめく得物の光、暗にうごめく黒い人影、ののしり騒ぐ濁声だみごえ、十字鍬や、スクープや、ショーブルの乱れたところは、まるで戦争いくさの後をまのあたり観るようである。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
旦「何うも君は押付けたような事をいうのが面白い……君に出会ってこのまゝ別れるのは戦争いくさの法にはえようだから、どうだえ何処かでおまんまべてえが付合わねえか」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さてものっそりは気に働らきのない男と呆れ果てつつ、これ棟梁殿、この暴風雨あらしにそうして居られては済むまい、瓦が飛ぶ樹が折れる、戸外おもてはまるで戦争いくさのような騒ぎの中に
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
唯協同して生活を営む上に互に自分に適した仕事を受持つので、児を産むからけがらわしい、戦争いくさに出るから尊いというような偏頗へんぱな考を男も女も持たぬように致したいと存じます。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
途端に其処に通掛った近衛の将校の方があったのです——凛々りりしい顔をなすった戦争いくさに強そうな方でしたがねえ、其将校の何処が気に入らなかったのか、其可怖こわい眼をした女の方が
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
子供が戦争いくさごッこをやッたり、飯事ままごとをやる、丁度そう云った心持だ。そりゃ私の技倆が不足なせいもあろうが、併しどんなに技倆が優れていたからって、真実ほんとの事は書ける筈がないよ。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
天下を狙いたいにも天下のあきはないし、戦争いくさをしたくも戦争は起らず、せめて女にでもぞっこん打ち込む事が出来ればまだいいが、生憎あいにくすいも甘いも分りすぎているし——そうして
この若い者が戦争いくさに出るとは誠に危ない話で、流丸りゅうがんあたっても死んで仕舞しまわなければならぬ、こんな分らない戦争に鉄砲をかつがせると云うならば、領分中の百姓に担がせても同じ事だ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もう御覧のとおり、こちらは中庭を一ツ、橋懸はしがかりで隔てました、一室ひとま別段のお座敷でござりますから、さのみ騒々しゅうもございませんが、二百余りの客でござりますで、宵の内はまるで戦争いくさ
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「道服に一腰ざし。むくつけい暴男あらおとこで……戦争いくさを経つろうを負うて……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
「花火ではありません——戦争いくさでやられました」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
戦争いくさになつてからは、さう暢気のんきな事も出来ないが、伯林ベルリンの市中では、いつも大晦日おほみそかは、市街まちを歩く人達が、出会頭であひがしらに誰彼の容捨はなく
そこで自分は戦争いくさでなく、ほかに何か、戦争いくさの時のような心持ちにみんながなって暮らす方法はないものかしらんと考えた。考えながら歩いた。(完)
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
戦争いくさに勝ってペキンを取ってしまったけれど、ペキンが饑饉ききんの時分に自分の国から米、麦あるいは着物など沢山船で持って来てそうして幾百万の人を救うた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
日本にっぽんもうくに古来こらい尚武しょうぶ気性きしょうんだお国柄くにがらであるめ、武芸ぶげい偵察ていさつ戦争いくさ駈引等かけひきとうにすぐれた、つまり男性的だんせいてき天狗てんぐさんはほとんど全部ぜんぶこのくにあつまってしま
此辺では「雹乱ひょうらん」と云って、雹は戦争いくさよりも恐れられる。そこで雹祭ひょうまつりをする。榛名様はるなさんに願をかける。然し榛名様も、鎮守の八幡も、如何どうともしかね玉う場合がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
姿なりの拵えが野暮でござえます、お屋敷さんで殿様が逝去おかくれになって仕舞ったので、何でも許嫁いいなずけの殿様が戦争いくさ討死うちじにをして、それから貞操みさおを立てるに髪を切ろうと云うのを
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
軍艦ふねつくるの、戦争いくさするのツて、税は増す物は高くなる、食ふの食へねエので毎日苦んで居るんだが、かつら大臣の邸など見りや、裏の土手へ石垣を積むので、まるで御城の様な大普請おほふしん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
戦争いくさはいやなもんでごあんすの、山木さん。——そいでその婚礼は何日いつ?」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
『兄さん、貴方は死んで呉れちゃいやですよ。決して死ぬんじゃありませんよ。貴方は普通ただ兵士へいたいですよ。戦争いくさの時、死ぬ為に、平生つねから扶持を受けてる人達とは違ってよ。兄さん自分から好んで、』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
世間は直ぐに戦争いくさよりは余計乱れると、私、思うんですよ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さればとて少女と申す者誰も戦争いくさぎらひに候。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「だってそうじゃないかお前、今度の戦争いくさだって日本の軍人がえらいから何時いつでも勝つのじゃないか。軍人あっての日本だアね、私共は軍人が一番すきサ」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それは無理もない、亡くなつた男は一生涯細君と戦争いくさを続けて来たのに、弁士は独身者どくしんもののやうに言つてゐる。
雲をつかむような話で、あるいはシナの皇帝は位を皇太子に譲ってどこかへ逃げて行っちまったとも言い、なあにそうじゃない、戦争いくさに負けて新安府へ逃げたのである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
随分気性な人ゆえ戦争いくさにでも出て討死もしかねない気性ですから、大方死んでゞもしまったろうと常々母親おふくろが申して居りましたが、その兄さえ達者なれば会う事も有りましょうが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いやになつたら何時でも左様さやうならをキメるまでサ——大洞おほほらさんもサウおつしやるんだよ、決して長くとは言はない、露西亜ロシヤ戦争いくさ何方どつちともまるまでの所、いやでもあらうが花ちやんに
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なに? すがすがしくも散る? 僕——わしはそう思うがね、花でも何でも日本人はあまり散るのを賞翫しょうがんするが、それも潔白でいいが、過ぎるとよくないね。戦争いくさでも早く討死うちじにする方が負けだよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
戦争いくさをしようにも隣の国がない。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
娘はパラソルの先きで戦争いくさに出てゐる恋しい男の名前を地面ぢづらに書いては、踏み消したりなぞしてゐた。
「けれども、だめだ、もうだめだ、もう戦争いくさはやんじゃった、古い号外を読むと、なんだか急に年をとってしまって、生涯しょうがいがおしまいになったような気がする、……」
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
先方むこうではわしの物じゃかららん用を勤めたら金を遣るぞ、勤めをして貰うのは当然あたりまえだから、先方さきへくれろ、それを此方こっちゃで只取ろうとする、先方さきでは渡さんとする、是が大きゅうなると戦争いくさじゃ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
養子にくのは、戦争いくさに出かけると同じやうに敵をそつくり生捕いけどるか、さもなければ身一つで逃げ出すだけの気転が無くてはならぬが、それでも養子にけぬとなると
是は戦争いくさの時に物見をした松だと申す事でございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「八たび戦争いくさに出て、生命懸いのちがけの働きをした者は自制の道をわきまへてゐますぞ。」