引込ひきこ)” の例文
してると、端艇たんていは、何時いつにか印度洋インドやう名高なだか大潮流だいてうりう引込ひきこまれたのであらう。わたくしなんとなくのぞみのあるやうかんじてたよ。
僧が引込ひきこんだので三左衛門はそこへ草履ぞうりを脱いであがった。庵の内にはわらを敷いて見附みつけ仏間ぶつまを設けてあったが、それは扉を締めてあった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うっとりの底へ引込ひきこまれると申しますより、空へき上げられる塩梅あんばいの、何んとも言えない心持こころもちがして、それで寝ましたんですが、貴下あなた
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うけければ我が家に引込ひきこみ居たりしに玄柳方より呼びに來りしかば早速さつそく走り行き四人打寄うちより又々惡事の相談をなすにお常は聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今時分田舎から都へ出る人はあろうとも、都から田舎にわざ/\引込ひきこむ者があろうか、戯談じょうだんに違いない、とうっちゃって置いたのだと云う事が後で知れた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「仕方ないなどと、今の積極時代せっきょくじだい引込ひきこんで居られることはありません。私が大使に強談判こわだんぱんをして……」
京子は芸者に出ていた頃のお客をそのまま妾宅しょうたく引込ひきこみ、それでも足りない時は知合いの待合まちあいや結婚媒介所を歩き廻って、結句何不自由もなく日を送っているのを
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
致し方がないから産落うみおとした女のを連れて、お熊は深川の網打場へ引込ひきこみ、門番の勘藏は新左衞門の若様新吉と云うのを抱いて、自分の知己しるべの者が大門町だいもんちょうにございますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
非人ひにんて、死者ししゃや、あしとらえてあななか引込ひきこんでしまうのだ、うッふ! だがなんでもない……そのかわおれからけてて、ここらの奴等やつら片端かたッぱしからおどしてくれる
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
家の奥の方に引込ひきこんで一切客にわずに、昼夜精切せいぎり一杯、こんのあらん限り写した。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
引込ひきこまれて、はッと礼を返したが、それッきり。御新姐ごしんぞの方は見られなくって、わきを向くと貴下あなた一厘土器いちもんかわらけ怪訝けげん顔色かおつき
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『それこの拳骨げんこつでもくらへ。』と大膽だいたんにも鐵拳てつけん車外しやぐわい突出つきだし、猛獸まうじういかつて飛付とびついて途端とたんヒヨイとその引込ひきこまして
ヘエうも誠に久しく御無沙汰致しました、御機嫌宜しゅう、田舎へ引込ひきこみましてからは手紙ばかりが頼りで、とんと出る事も出来ません、養子の身の上でございますからな
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
門衛も小屋の中に引込ひきこんでしまい、あとは西風がわが者顔に、不気味な音をたてて硝子ガラス戸や柵を揺すぶっていた。湖畔の悪魔は、西風に乗って、また帰ってきたのであろうか。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お前が愚図々々ぐずぐず云うなら即席に叩倒たたきたおして先生の処に引摺ひきずっいっろうと思ったその決心が顔色がんしょくあらわれて怖かったのか何か知らぬが、お前はどうもせずに引込ひきこんで仕舞しまった。如何いかにしても済まないやつだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
非人ひにんて、死者ししやや、あしとらへてあななか引込ひきこんでしまふのだ、うツふ! だがなんでもない……其換そのかはおれからけてて、此處こゝらの奴等やつら片端かたツぱしからおどしてれる、みんな白髮しらがにしてしまつてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はなしまぎれて、友造ともざうは、こゝに自分じぶんたちが不意ふいにめぐりあはうとして、れがために同伴つれなかからくるまをはづして引込ひきこんだものとおもつてしまつたらしい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まアお前彼方そっち引込ひきこんで、わしが勘弁出来ぬ、本当なればお隅が先へ立って追出すというが当然あたりまいだが、こういう優しげな気性だから勘弁というお隅の心根エ聞けば、一度は許すが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
出発のときは、胴体から引込ひきこみ式の三きゃくをくりだして、これによって滑走かっそうした。そのとき、やはり胴体から水平翼すいへいよく舵器だきが引き出されて、ふつうの飛行機とどうように地上を滑走した。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
もとよりかゝ巨魚きよぎよくることとてとても、引上ひきあげるどころのさわぎでない、あやまてば端艇たんてい諸共もろとも海底かいてい引込ひきこまれんず有樣ありさま、けれど此時このときこの鐵鎖くさり如何どうしてはなたれやうぞ、沙魚ふかつか、わたくしけるか
勝負は時の運にる、負けても恥かしいことはない、議論があたらなかっても構わないが、遣傷やりそこなったらその身の不運と諦らめて、山に引込ひきこむか、寺の坊主にでもなって、生涯を送ればいと思えども
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
してくだすつた兵隊へいたいさんを、こゝでもをがみませう。」と、女中ぢよちう一所いつしよかさなつてかどのぞいた家内かないに、「怪我けがをしますよ。」としかられて引込ひきこんだ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其の時四つになる忰をあとに残し、離縁を取って越後の村上へ引込ひきこみ、二年程過ぎて此の家に再縁して参りましたが、此のたび江戸で図らずも十九年ぶりにて忰の孝助に逢いましたが
かつると、躍上をどりあがつて、黒髮くろかみ引掴ひツつかむと、ゆきなすはだどろうへ引倒ひきたふして、ずる/\とうち引込ひきこむ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幸「へえー、そりゃア何うも思い掛けない事で……何んでげすか、一時は谷中の団子坂下に入らっしゃる事を聞きましたが、それじゃア此の頃では田舎へ引込ひきこんで入らっしゃるのですか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘のなさけで内と一所にぜんを並べて食事をさせると、沢庵たくあんきれをくわえてすみの方へ引込ひきこむいじらしさ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親父おやじがやかましいの、どうか閑静な所へきたいのと、さま/″\の事を云うから、此の別荘に置けば、斯様かようなる男を引きずり込み、親の目をかすめて不義を働きたいめに閑地かんち引込ひきこんだのであろう
むすめなさけうちと一しよぜんならべて食事しよくじをさせると、沢庵たくわんきれをくわへてすみはう引込ひきこむいぢらしさ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
内々ない/\隣家となりの次男源次郎げんじろう引込ひきこみ楽しんで居りました。
もとのみちを、おもへだててひろ空地あきちがあつて、つてはにはつくるのださうで、立樹たちきあひだ彼方此方あちこちいし澤山たくさん引込ひきこんである。かはつてふる水車小屋すゐしやごやまた茅葺かやぶき小屋こやもある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人間の気を奪ふため、ことさらに引込ひきこまれ/\、やがてたちまその最後の片翼かたつばさも、城の石垣につツと消えると、いままで呼吸いきを詰めた、群集ぐんじゅが、おう一斉いっときに、わツと鳴つて声を揚げた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はやこと、くる/\と引込ひきこんで手玉てだまるから、吃驚びつくりして、元二げんじくとはなさぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へい、それ引込ひきこめ、と仰有おつしやりますから、精々せい/″\目着めつかりませんやうに、突然いきなり蝋燭らふそくしてたでござります。やまかげりますで、くるまだい月夜つきよでも、一寸ちよいとにはきますまいとおもひまして、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
植込を向うへ引込ひきこんだ離座敷に、一寸ちょっと看板を出しました——百ものがたりにはつきものですが、あとで、一人ずつ順に其処そこへ行って、記念の署名をと云った都合なんで、勿論もちろん、夜が更けましてから……
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と真顔に引込ひきこまれて
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眞顏まがほ引込ひきこまれて
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)