夕空ゆうぞら)” の例文
そして、それを夕空ゆうぞらはなしてやると、とんぼや、せみはさもうれしそうに、おれいをいって、んでいくようにえたのであります。
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
直ぐ後の方でがさ/\と草が鳴ったと思うたら、夕空ゆうぞらうつって大きな黒い影が二つぬうと立って居る。其れは鹿であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
夕空ゆうぞらはしだいにくらやみのいろにつつまれ、ほそい新月しんげつゆめのような姿すがたをみせ、ほしもふたつみっつ数をましていった。
股野重郎の細君さいくんのあけみは、もと少女歌劇女優の夕空ゆうぞらあけみであった。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、こわれた天井てんじょうから、うすもも色の夕空ゆうぞらを、ながめていました。
わたしは、それまであんなうつくしい夕空ゆうぞらたことがありません。子供こどもたちは、あそびに夢中むちゅうになって、いえかえるのをわすれていました。
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ピストルの音は一ぱつだけではなかった。つづけざまに、五発の銃声じゅうせい夕空ゆうぞらにこだまして、まち静寂せいじゃくをやぶった。
季節きせつあきにはいると、どこからともなく、わたどりがあかねいろ夕空ゆうぞらを、やまうえたかく、豆粒まめつぶのように、ちらばりながら、んでいくのがえました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで、わしは、この年寄としよりになっても、西にし夕空ゆうぞらるたびに、なつかしいおかあさんのかおおもかべるのです。
お母さまは太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕空ゆうぞらかがやほしのように、また、うみからがったさまざまのかいがらのように、それらのはなうつくしくいていました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかねいろをした、夕空ゆうぞらには、やぐらが、たっていました。そのいただきに、ついているブリキのはたが、かぜ方向ほうこうへ、まわるたびに、おとをたてました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたしてほどなくくもり、そしてっていたあめれてしまいました。あとには、すがすがしい夕空ゆうぞら青々あおあおみずのたたえられたようにんでえました。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、なみいわせてくだけるおとが、しずかな夕空ゆうぞらしたに、かすかにこえてくるばかりであります。
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小舟こぶね晩方ばんがた金色こんじきかがやなみって、ふたたびりくをはなれてあちらにまっている汽船きせんをさしてこぎました。海鳥かいちょうは、うつくしい夕空ゆうぞらにおもしろそうにんでいました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あお夕空ゆうぞらのように、あわいかなしみをたたえたおさけが、ちいさなコップにつがれました。おかねは、それに、くちびるをつけると、あまくてさけというかんじはしませんでした。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばんは、くびかたむけてかんがえていましたが、やがて、ながれをまっすぐにあちらへ横切よこぎってゆきました。ながれには、さんらんとして、さざなみがあめれた夕空ゆうぞらしたしょうじました。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あか夕空ゆうぞらしたに、工場こうじょう煙突えんとつがたくさんたっている、近代的きんだいてきまち風景ふうけいとか、だいだいいろ太陽たいようえるおかに、光線こうせんなみうつ果樹園かじゅえんとか、さもなければ、はてしない紺碧こんぺきうみをいく
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、谷風たにかぜに、むべのつるが、むなしくえだにぎったまま夕空ゆうぞらになびいている姿すがたをながめながら、どうか、このつぎのはるまでに、むべも、かえでも、もっとふとく、つよくなるようにといって
谷間のしじゅうから (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、だれか、小石こいしひろって、電信柱でんしんばしらいただきまっているあかとりがけて、げました。あかとりおどろいて、くもをかすめて、ふたたび夕空ゆうぞら先刻さっききたほうへと、んでいってしまいました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、なにか一つくろてんのようなものが、夕空ゆうぞらをこなたにかってだんだんちかづいてくるようにえたのであります。みんなはしばらく、をみはってそのものにをとられていました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)